わたしは子供で閻魔は大人。
コーヒー飲めないから子供。煙草吸えないから子供。お酒飲めないから子供。車の運転できないから子供。一人で遠くに行けないから子供。お化け屋敷怖いから子供。注射嫌だから子供。子供だなあって閻魔が笑うから憎たらしくなって冷水をぶっかけたら苦笑しながら、機嫌悪い?って顔を覗きこまれた。それがとんでもなく不愉快でムカつく。わたしはそんな閻魔がだいきらい。次付き合うなら、絶対同い年にしよう。
「名前は可愛いなぁ」
にやにや笑いながら髪の毛を拭く。まだ滴る水がふわふわで可愛い色のカーペットに染みを作った。頬やら二の腕やらにベタベタ触る閻魔の指が冷たい。くすぐったい。
「ねぇ」
「なーに」
「わたし、次は同い年の人と付き合う」
「そっか」
ほら、その余裕がムカつく。わたしばっかり必死みたいでムカつく。閻魔ばっかり余裕で、大人で。わたしだって閻魔がするみたいにキスできるんだよ。セックスもできるよ。閻魔の隣、並べるんだよ。
堪えられずにボロボロ零れた涙を閻魔の指が拭った。
「俺、結構余裕ないよ」
名前といるときはね、付け足して言ってタオルで顔を隠した。
閻魔がたまにする、噛みつくような深いキスは苦手だ。頭がぼーっとしてくらくらするから。煙草の匂いもお酒の匂いもきらい。閻魔の大人っぽい笑い方も嫌い。
「俺も次は同い年の子と付き合おうかなあ」
「駄目」
「なんで」
「閻魔はわたしのだから」
まだ子供でいたい
(だから我侭も許してね)