「閻魔先輩彼女さんと別れたって本当ですか?」
「…太子?」
「YES」
心底嫌そうな顔で私を見た閻魔先輩は今日も格好良かった。今日も素敵ですね、付け足して言うと、有難うと面倒臭そうに、でも少しだけ嬉しそうに返してくれた。
「別れたなら私と付き合って下さいよ」
「ヤダい」
「その返答がヤダい」
「我侭」
「先輩もですよねー」
さっき買ったばかりのイチゴオレを先輩の机に置いた。くれるの?と私を見た閻魔先輩が可愛かったので縦に頷いたら、嬉しそうに笑った。目の周りが少しだけ赤くなっていたのは、気付いてないよ。
先輩は優しい人だ。きっと彼女さんを責めることなんてしなかったんだろう。先輩は寂しがり屋だ。きっと休んだ昨日は泣いていたんだろう。先輩は、私のものじゃ、ない。
「先輩って、」
「ねぇ」
「…はい」
「もう授業始まるよ」
先輩が指さした先の時計は、もう授業開始時間を指していて、すぐにチャイムが鳴った。
「また来ます!」
「もう来ないでー」
恋は盲目だのなんだの言っておりますが私は彼の格好悪いところも愛しています。
だから私の物になんてさあ、言えないし。