「そーちゃん」
「何でィ」
「けっこんしよー」
「断固拒否」
「きょうねぇ、わたしね、」
「おい、お前、」
「ねぇそーちゃん、」
わたしのはなしきいてよ、もう殆ど見えない目に俺を映しながら怒鳴りつけるように言った。黙って手を握ってやると嬉しそうに笑う。
「そーちゃんわたしのこと、きらいになった?」
「あ?」
「こえが、ふきげんだよ」
ニコニコと笑顔を崩さない。そんな表情に見合わない冷たい声で淡々と言葉を吐く。
「なまえ、よんで」
「………、」
「ねぇ、そーちゃん…、ねえ」
「うるせえよ」
振り払った手に温度は感じられない。濁った眼に俺は映らない。発する事のない声を、何度も聞いた。腐りかけたソレの名前はもう覚えていない。異臭が鼻を突いた。
ああ、そうか、死んでんのか。
やっと実感できた事実を、それでも受け止めたくなくて死体にしがみ付いて泣いた。明日にはきっと、俺も逝ける筈だから、なあ。もう少しだけ、笑って。半透明の午後
(将来は餓死)