ハルに友達ができたらしい。最初は自分の事のように一緒に喜んでいたのだけど、シズクちゃん、という人のことを本当に愛おしそうに話すハルを見て、なんだか私はとっても惨めになってしまった。私、未だに、友達できないし。ハルが羨ましい。うらめしい。そう思うとどんどん悪い方向に考えちゃって、最後にはもうハルには私がいらないんじゃないかって考えた。
これが一週間前の事。
白い息をはぁ、と吐く。どんよりと雲が覆う空を見た。街灯の下のベンチに座る私。冷たい風は容赦なくて寒い。コートのポケットの中に手を突っ込んだ。ぎゅう、と目を閉じたけれど、後ろから聞こえる足音に目を開ける。視界に入ったのはふわふわの癖っ毛を風に揺らす、ハル。嬉しそうにニカッと笑って私の名前を呼んだ。
「名前」
「…ハルじゃん」
「何してんだ?」
「何もしてないよ」
「危ねーぞ、こんな時間まで遊んでたら」
「ハルと一緒にすんな。勉強帰りだよー。図書館行ってきたの」
「お前シズクみたいだな」
またシズクか。内心呆れつつそうだねーと適当に返事を返す。ハルは何食わぬ顔で私の隣に座った。
「ハル、髪の毛に葉っぱ付いてるよ」
「…オレ、」
「何?」
「どうしたらいいのか、わかんねぇんだ」
「…何が」
「シズクのこと、すっげえ好きなのに、上手く伝わらない」
「……。」
「いっつも、失敗ばっかりだ」
私の方を見て、自嘲気味に笑ったハルは、私を見てはいなかった。いいじゃない、ハルにはそこまで想える人がいるのだから。言葉にはできなかったけれど、足で軽く砂を蹴ったハルの横顔を見ながらそんなことを思った。
「ハル」
「ん?」
「人に優しくされるは、怖いね」
「……うん」
くしゃりと私の髪を撫でてハルは立ち上がった。送って行ってくれるというので厚意に甘えて、人通りの少ない歩道を並んで歩く。私いつも一人ぼっちだなあ。今更泣いたりなんてしないけれど、歩くのが早くて私の少し前を行くハルの背中を、思いっきり蹴り飛ばしてやりたくなった。
木の葉通り