あっまいココアを飲んだ。それはもう、あっまい。よくそんなの飲めんなぁ。関心したような、呆れたような声で、隣でコーヒーを飲む沖田が呟いた。私は苦いの飲めないんだよ、ぼそっと呟くと、急に、沖田の唇で口を塞がれる。冷たいコンクリートにココアがばしゃ、と零れた。
「あーあ…」
「あっま…」
「ちょっと、靴にかかったじゃん」
「ざまーみろ」
「さいてー」
からんからん音を立てて、ココアが入っていた空き缶が転がっていく。追いかけた方がいいのかと立ち上がると、沖田に腕を掴まれた。
「どこ行くんでィ」
「缶、拾いに」
「大丈夫だろ」
「環境破壊、いくない」
少し離れた場所で止まった空き缶を触ったら、ベタベタした(しかも砂とか付いてて、汚い)。ベタベタの空き缶を持って沖田の隣に戻る。
「なぁ」
「何」
「セックスしようぜ」
「ここで?やだよ、寒い」
「すぐ熱くなるだろ」
「馬鹿じゃん」
真っ黒の空を見上げた。星が綺麗。大きな公園のベンチにぽつんと座る私は、お勤め帰りであろうサラリーマンを横目で見た。視界の端で沖田は、ぼーっと、どこか遠くを眺めていた。
「駆け落ちでもするかィ」
「課題やってないからって、自棄にならないでよ」
沖田は笑って(鼻で)、もう冷めてしまったであろうコーヒーを飲みほした。
ガラクタ365日