20/20

衝撃の事実が判明した。

「しかも、ナナちゃんの初恋の人じゃなかったかしら。たしか。天雅くんって」
「マジで!?なんでダンくんといい今日こんな運命の出会い多いの!?」
「きっと神様が幽霊と人間の架け橋を作ってくださってるのよぉ」
「滝川先生、そんな若かったのね…」
「うん、40歳ちょっとじゃないかしら」

年齢より結構老けて見える滝川から、ナナは一向に離れない。
滝川はしばらく目を閉じてナナのぬくもりを感じていたが、ようやく我に返った。生徒が見ている。そうだ、今はオリエンテーションの最中だった。

「奈々子ちゃん、話は後でしましょう。今はこのオリエンテーションを…」
「………!」

ナナは嫌がった。離れたくなくてしょうがないらしい。会えた事が嬉しくてたまらないのだ。滝川は、ふと微笑むと、ナナの身体を片腕で抱き上げた。ナナはビックリしてバランスを崩しそうになったが、滝川は一瞬離れたナナの手を握って体勢を整えてやった。

「さて…みなさん、検査は終わったようですね。午後にはリストバンド…」
「せんせー、それさっき聞きました」
「…失礼。では、教室に戻って昼食にしてください。余った時間は上級生の授業の邪魔にならない程度に教室ですごしてください。私はちょっとこの女人とお話がありますので、質問は担任の先生、教科の先生、お友達に尋ねてください。それでは解散」

なんとなく最後はおざなりだったが、滝川はナナを抱えたままさっさと壇上から降りてしまった。残された生徒達は、しばらく固まっていたがしばらくして、担任に群がるもの、教室へ帰って行く者、まだ残っている医者に自分の霊感は異常ではないのか尋ねるものなどに分かれた。
離れていた幽霊どもが寄ってきた朔夜たちは、相談した挙句部室へと行くことにした。
教室に帰ってもクラスメイトに質問攻めにされるのは目に見えていたし、なにより飛鳥の許可を取って荷物を部室においてあるので昼食をするのにも適していた。

「ナナちゃんは後で迎えに行けばいいよね」
「筆談できるからダンくんより賢いわよぉ」
「『失敬な、筆談くらい僕にも出来る。ただ、誰も読めないだけだ』」
「えらそうに言うんじゃないよ、きったない英語のくせに」
「朔夜、さりげなく零威さんの手を握るんじゃない!!」
「うるさいな、鞍羅とも握ってるんだからいいだろ」
「『朔夜の行動に文句をつける気か、小鼠』」
「いえ、なんでもないです…」
「お昼ゴハン、楽しみデスねー!零威サンは早起きシテ頑張ってマシタ」
「マジで!?超楽しみ!」
「あんた、あんなヘビーなオリエンテーションの後で元気ねぇ…」
「過ぎたことは過ぎたこと!いいじゃん、みんな見えるなら隠さなくていいもんね」
「それはそうね」
「行こう、体育館の裏なんて便利なとこに部室があるもんだよ!」
「さっちゃん、ミッチェルさん、また後でねぇ」
「うん、三人ともまたね!」

鞍羅は、同じクラスの流れに乗って去っていく幸に軽く手を振った。これからミッチェルの事に関してもみくちゃにされながら説明に奔走させられるであろう彼女は、少し困った顔をしていた。
鞍羅は少し心配になったが、朔夜は気付いていなかった。そしてふたりの手をつかんで、部室に向かって駆け出した。
群蔵は付いていきながら発奮していた。




[ 55/55 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
メインへ
TOP



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -