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朔夜は言葉に反して絆創膏を貼ってもらってすぐ検査の終わった連中がたまっているクラスの場所へ行った。
みんな自分の属性と矯正の話で持ちきりだ。
幽霊が見えるのが嬉しいのだろうか。朔夜には当たり前すぎて分からなかった。でも自分が今まで見えないと思っていたものを見える、その感覚はなんとなく分かる気がした。

「皇、お前属性は?俺、橙燃だった!」

興奮気味の唐沢が尋ねてきた。

「漆黒。なんとなく分かってたけどね。俺、神降師だし」
「かみおろし?」
「幽霊を人間とか自分とかマネキンに強制的にとりつかせる能力者のこと。うちは裏宗家だから漆黒だと思ったよ」
「なんだとー!?幽霊が見える他にまだなんかあるのか!?俺今日一日で頭パンクしそうだぞ!」
「さっきー、あたし灼熱だった!灼熱と漆黒って相性いいのかな?あたしとさっきーの相性…」
「私は深緑!私の方が相性良いわよね!」
「あ、いや、知らないけど…漆黒って言うからには白と相性いいんじゃないかな」

クラスの女子が我先にと属性を羅列していく。しかし、漆黒と白等はいなかった。女子は頬を膨らませて朔夜の言葉を聴いている。女子は多様に富んでいるようだが、男子は圧倒的に橙燃が多いようだった。



「皆さん、検査は終わりましたか?」

滝川の言葉に全員が元気良く返事した。特に朔夜のクラス、い組は。

「午後には皆さん個々にリストバンドをお配りできると思いますので、しばらくはその仮のリストバンドで過ごしてください。なお、登校は制服はありませんが、このリストバンドが制服代わりになりますので決してなくさないようにしてください」

もう一度大きな返事が返ってきた。滝川は満足そうに頷くと、ステージに腰掛けている三人の幽霊を見下ろした。

「お嬢さん、その二人と絡むとろくなことはありませんよ。せいぜい毒されないように気をつけてください」
「………」
「天雅さん、そりゃないよー」
「こんな可愛い子に俺達が手を出すとでも?」
「名前で呼ぶのはおやめなさい。私はお嬢さんがあなた方に毒されて名乗り上げなんてろくでもないことをしないように心配しているのです」

滝川が口元に扇子を当てて苦々しく言った。ナナはしばらくその様子を見ていたが、急に立ち上がり滝川の隣に歩み寄った。

「なんです、お嬢さん?」
「…!」
「わぁっ!」

滝川が尋ねた瞬間、ナナは一年生全員が見守る中、滝川の腰に抱きついた。滝川は扇子を取り落とし、びっくりしてナナを見下ろしている。ナナはそれを見上げて目をきらきらさせている。

「お、お嬢さん、なんですかいきなり!?もうあの二人に毒されて…」
「ナナちゃん!」

慌てて鞍羅がステージに駆け寄ったが、長机が邪魔をしてそれより先に行けない。ナナの名前を聞いた瞬間、滝川の表情が変わった。腰に回された手を丁重に解いてもらうと、しゃがみこんでナナと同じ目線にあわせた。

「…奈々子ちゃん?」

滝川がさっきとは打って変わって消え入りそうな声でつぶやくと、ナナはもっと目を輝かせた。そのまま激しく首を縦に振る。そして今度は滝川の首に腕を回して抱きしめた。一瞬あっけに取られていた滝川も、はっとしてナナの背中に手を回して抱きしめた。
体育館中の人間が(ジャックとジョージ、医者含む)目を丸くしている。

「奈々子ちゃん?本当に奈々子ちゃんですか?」
「………!」

ナナはすすり声を上げた。泣いているようだ。
滝川の厳しい顔が、ものすごく緩んできた。親子ほどの歳の離れた相手、しかも幽霊と人間が抱き合っている。滝川もかなりの霊力の持ち主のようだ。滝川はナナの頭に手を当て、強く強く抱きしめた。ナナも負けじとずっと抱きついている。鞍羅は何が起こっているのかなんとなく予想がついたようだった。宙を掻いていた手を伸ばすのをやめた。
そこに朔夜と零威が駆け寄ってくる。

「何があったの?」
「うふふ、あの二人知り合いなのよ」
「え!?」
「小学校の同級生なの」




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