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「属性は、『灼熱』、『青蜀』、『深緑』、『橙燃』、『紫煙』、『白等』、『漆黒』の七つです。色分けはされていますが、殆どが性格などには起因せず、目的は幽霊との相性を目で見えるように判断してもらうもの。それからこれから三年間暮らしてもらう学園生活でイベントなどで分かれて作業してもらう際、分かりやすく分類するのがこの属性検査の目的です」

そう説明が中断したところで、白衣を着た12人の医者らしき人間と、同じ人数の看護師が体育館の奥から入ってきた。そのまま壁伝いにステージ前に並べられた長机に向かって、席に着いた。看護師はその後ろにひとりひとり立っている。

「矯正とは先程簡単に説明しましたが、幽霊に干渉できるレベルのことです。我が学園では0から5まで設定しており、それ以上の生徒の入学は認めていません。皆さんは知らないかもしれませんが、入学面接で簡単な試験をしてありますので、皆さんがこれから矯正6以上に設定されることはありません。これも当学園独自の基準ですので、他の場所では通じません。記憶しておくように」

また中断した途端、今度は担任が集まってきた生徒を男女に分けて並ぶように指示し始めた。6クラスの男女で検査する為に12人の医者が用意されたのだろう。

「矯正は、0と1が幽霊に触れることまでできる、2と3がなんとかすれば触れることができる、4と5は触れることはできません。当学園は幽霊の連れ込みは自由ですが、皆さんが見えるのは矯正5の人間にでも強制的に人間の形を視認させられるほど強力な霊力を持つ幽霊だけですので、普段連れている幽霊などは見えないかもしれません。覚えて置くように」

滝川の説明はそこまでのようだった。各クラス一人目の男女が医者の前に立った。医者は看護師に手を差し出し、看護師が腰から大量に下げている針のついたアンプルを受け取った。中には透明の液体が入っていた。針はそれなりに太かった。それを生徒の左手の小指に刺して、一滴だけ血を採った。アンプルの中に落ちた血痕をじっと見て、医者は属性の判断を下した。色が緑色に変わったのだ。

「深緑」
「はい」

看護師は手にした書類に何か記入した。医者はそれから五つの深い緑色のリストバンドを生徒の手首に嵌め、背後を指してぶつぶつ言っていた。
朔夜には見えているが、医者と看護師の更に後ろに、12人の幽霊が並んで立っているのだ。それを指して、どれくらい見えるかで矯正とやらを測っているのだろう。

「矯正3」
「はい。こちらへ、絆創膏を貼りましょうね」

看護師は書類に詳細を記載した後、針を刺された指に絆創膏を貼ってくれた。
朔夜はかなり後ろの方にいた。
属性とやらは知らないが、自分は矯正0だと先程滝川が言っていたので、他の人間ほどさして興味が無かった。
検査は一人一人にそれほど時間がかからなかったせいか、朔夜の順番もすぐに回ってきた。

「あれ、庵斎先生じゃん」
「ん?おお、朔夜くん。こないだぶり」
「皇、知り合いか?」

朔夜の番が回ってきて、医者の前に立つと、それは見慣れた医者の顔だった。庵斎病院の副院長、庵斎創助の顔だった。
素っ頓狂な朔夜の声に、背後に並んでいた矢野が声をかけてきた。

「俺がしょっちゅうお世話になってる『幽霊病院』の副院長先生」
「ぐだぐだ言ってないで手を出せ。君の矯正は分かっているが、属性は分からないから調べる。まぁ、大体予想はつくが…」
「はいはい」

朔夜はしぶしぶ左手を出した。指先に針が埋まる。針の中を伝った血がアンプルにたどり着くと、振って混ぜるより早く色が真っ黒に変化した。
それから朔夜には何もつけずに親指で看護師の後ろにいるよぼよぼのじいさんの幽霊を指差した。朔夜が小さく「じいさん。老衰」と呟くと、庵斎はうなずいた。

「属性、漆黒。矯正0」
「はい。絆創膏貼りましょうね」
「あれ、蘭子さん。蘭子さんまで駆り出されてるの」
「そうなのよ。おかげで今日は半日病院はお休み。院長先生は学会で日光行ってるし」
「へー、旅好きだよね、院長先生」
「朔夜くん、黙って行け。後が詰まる」
「もう詰まるほど人いないじゃん」
「ああいえばこう言う。可愛げのないガキだ」
「はいはい」




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