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「それでは、何某学園幽霊オリエンテーションを終了したいと思います。引き続き一年生は属性と矯正の検査をするため、医師による霊力チェックを行っていただきます。上級生は教室に戻って普段通り授業を行うこと」

この言葉に対しては上級生の返事は腑抜けていた。よほど嫌なのだろう。ようやく体育館のステージと反対側の壁にある大きな扉が開いて、上級生が蜘蛛の子を散らすように出て行った。

残された一年生は、検査と言われてもどうしていいのか分からず呆然と立ち尽くしている。
そんな一年生など完全に無視して、出て行った上級生の担任や教科担当の教師以外の教師が、あわただしく準備を始めた。その瞬間、一時限目を終えるチャイムが鳴り響いた。あれだけの事態を50分で収めた滝川の手腕は素晴らしいものだと一部の生徒は感心していた。

「お手洗いに行く生徒はいってらっしゃい。それ以外の生徒は先生方のお手伝いを。幽霊の皆さんは自由にしていただいてけっこうです」

滝川はそれだけ言うと、自分も仕度の手伝いに取り掛かった。言葉だけではなく自分でも動く、教師達から見たら理想的な上司だろう。幽霊どもは上級生たちがいなくなってどうしようか考えているものもいたが、ジャックとジョージは検査を観察することに決めたようで、もうステージに仲良く腰掛けて足を揺らしている。
鞍羅に張り付いていたナナはようやく気が済んだのか鞍羅から離れると、ジャックとジョージが足を揺らしているのを目撃してそちらに走っていった。どうやら自分も仲間に入れて欲しいらしい。鞍羅は慌ててそれを追っていった。
ダンと松本、マイケルと群蔵も二人の傍を離れる気はないようだった。
おかげで人間に囲まれて質問攻めにされている。
朔夜と零威も同様、質問攻めだ。どうして幽霊が見えるようになったのか、見えるようになって弊害はないか、など似た様な質問もあれば、先程ダンや松本が器具を具現化したことに関しての説明を求める声もあった。
全く関係なく、朔夜や零威と話したいだけの人間も混じっているようだ。
10分の休み時間は、すぐに終わってしまった。




用意も終わったようだった。
ステージの前に長机が一列に並べられていた。特に器具は無い。が、並べられた長机の後ろにさらに12のパイプ椅子が並べられていた。準備とはこれだけか。

「皆さん、クラスごとに分かれてください」

再び壇上に上った滝川が咳払いもせず、よく通る声を響かせた。
一年生は反論することもなく、自分のクラスへ帰っていく。朔夜たちもなんとか解放されて、別れを告げると自分のクラスの列へと帰っていった。

「私は皆さんに、入学試験の面接で「幽霊と高校生活をおくることを 了承しますか」と質問しました。それは、みなさんに素質があったからです。霊力は高い人間と低い人間がいますが、無い人間はいないと言われています。皆さんはその霊力がより高い人間の中から選ばれ、この学校に入学を許可されたのです。ですから、幽霊が見えるのは当然です。ですが、幽霊にもとりつく相手や触れる人間というのに相性と言うものがあります。それを、我が学園では属性と呼びます。属性は七種類。先程皆さんにお配りしたリストバンドに描かれている色が属性の名前に含まれています」

滝川はそう言って先程一年生に配ったリストバンドを掲げて見せた。




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