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「そうだ、ミッチェルさんの恋人さんって。ミッチェルさん、外国人ですよね?何で日本なんかに探しにきてるんですか?っていうか、何人なんですか、ダンくん」
「ミッチェルで構わん。なんだ、知らないのか。私たちは英国の貴族層の人間だ。まぁ、アルフゲヘナ家は数代でインドで財を成したいわゆるインド成金という奴だが」
「ダンくんってイギリス人だったんだー。しかも貴族!謎が一つ解けたね」
「ちなみに私が日本にいる理由は、恋人が死の直後日本に渡っていたからだ。脳死でな…内臓を密輸する為に連れて行かれてしまった。だから、おそらく日本に来れば恋人に会えるだろうと思って、様々な人間を渡り歩いて、今は幸についている」
「あ、自己紹介してなかった。私。志賀野幸です。よろしくね」
「あー、さっちゃん?俺さっきー。よろしくね」
「あたしは剣零威」
「私、巫鞍羅よ〜。…あら?よく見たらうちのクラスの志賀野さん?」
「あら?鞍羅さん?この人たちと知り合いなの?」
「うん、友達よ〜。志賀野さんも見える人だったのね〜、よろしくね」
「うん。わたしのことはさっちゃんとでも呼んで」

女の子二人はきゃいきゃいやっている。これで少なくとも鞍羅はクラスに友達ができたわけだ。零威は焦っていた。正直ダンが旧友と再会しようが、その人物を覚えていようが関係ないが、自分はあのクラスで唯一、矯正0の人間なのだ。そんなことを言ったら朔夜も鞍羅もそうだが、朔夜はなんとなく受け入れられてる雰囲気だし、鞍羅は友人をみつけたようだし。自分はどうしていいのか、立ち尽くしてしまった。

「零威ちゃん」
「え?」
「あれ」

急に朔夜が零威の肩に腕を回した。
零威はびっくりして朔夜を仰ぐ。朔夜の目は、零威ではなく、彼らを取り巻いている周囲の壁を見ていた。零威もそちらに目を移す。
そこには真理が立っていた。
真理だけではない。昨日お昼ご飯に誘ってくれた何人もの『友人』が立っていた。

「零威ちゃん」
「真理ちゃん…」
「全然帰ってこないから心配してみんなで迎えに来ちゃった」
「え?」
「私たち、別に零威ちゃんが幽霊と人間みたいに接せるからって変な目で見るつもりなんかないわ」
「そうだぜ。この学園じゃこれが当たり前なんだろ?」
「剣一人変なわけじゃねーんだから、早く帰ってこいよ」
「それとも皇くんの傍にいたいの?」

真理の隣にいた女子が今朝の新聞をちらつかせながらにやにやと笑った。零威の顔が紅潮する。

「そんなわけないでしょ!こんな馬鹿、こっちから願い下げよ!」
「馬鹿ってのはひどくない?零威ちゃん」
「馬鹿は馬鹿でしょ!」

周囲にいた壁は、もう壁とは言えないほど崩れてしまっていた。ダンとミッチェルはなんとなく近づきがたかったが、人間三人はいつのまにか受け入れられていた。零威のクラスの面々がなだれてくると、同時に朔夜のクラス、他のクラスの会話したことも無い連中も三人を取り巻いた。松本は、取り巻いている人間の真ん中ににこにこ笑いながら透けて立っている。ダンとミッチェルの会話のやり取りをしなければならないので、三人の方へ行くわけには行かなかったのだ。

「私を思い出すまで、毎日でも君の前に現れてみせるからな」
「『冗談じゃない。ストーキングされるなんて気持悪くてしょうがない』」
「ストーキングというな!忘れた君が悪いとは思わんのか!」
「『思わないな。必要ないことは忘れたと思っているから、君のことも必要ないと脳が判断したんだろう』」
「そ、そんな…」




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