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「…入学式の日から話題の三人。『クールビューティー・剣零威』、『ふわふわ癒し系・巫鞍羅』、そして『天性の軟派男・皇朔夜』、この三人を我が新聞部は追ってみた。するとどうだろう、あろうことか三人は各々のファンが見守るなか熱い抱擁を交わしたではないか!最初に口を開いたのは巫、皇のためにお弁当を作ると言う驚愕発言。周囲の男達の舌打ちなどどこ吹く風、感動した皇は巫を強く抱き締める。すると黙っていなかったのは剣。負けじと自分もお弁当を作ると宣言。皇はこの言葉にも感銘を受けたのか剣をも抱き寄せる始末」
「皇は自他共に認める抱きつき魔でクラスメイトの話によれば、剣を抱き締めたのはこの一度だけでもないとのこと。昨日一年へ組の真ん前で抱き締めていた事実が発覚。新聞部はその写真を手に入れ損ねてしまったが、一年い組のK氏、Y氏の話を聞くと間違いないようだ」
「果たして皇の本命は剣なのか、巫なのか。はたまた抱きつき魔である彼の行動に深い意味はないのか。剣と巫の友情やいかに。もちろん二人のファンも黙っては居ないが、皇のファンも黙っては居ないだろう。これからの三人の動向に注目するところ…なぁに、これぇ」

三人はしばらく額を寄せて記事を読んでいたが、何人かの生徒がこちらに気付いたらしくこそこそと話を始めた。

「なんかとんでもないことになってるね」
「あんな公衆の面前であんだけひっついてたら写真も撮られるわ!」
「私、抱きしめられたのなんてすごく久しぶりでドキドキしちゃったぁ」
「くららみたいな可愛い子だったら毎朝、別れ際、いつでも抱きしめたいな」
「やぁだ、さっきーったらぁ。じゃあ毎朝と帰るときはいつもぎゅーよ」
「うん、約束ね」
「そこの馬鹿二人。ことの重大さがわかってるの!?」
「やーん、噂の三人じゃなーい!?昨日は見つけ損ねちゃったけど、今日は朝から会えるなんて感激感激ぃぃいい!」

朔夜と鞍羅が新聞を持ったまま憤慨している零威の隣でいちゃいちゃしていると、校門の方から甲高い歓声とカメラのシャッター音が聞こえてきた。なんだと思って目をやると、人垣を乗り越えたキャスケットをかぶった茶髪のおさげ女が、カメラを構えてこちらに突撃してくるところだった。
朔夜はとっさに鞍羅をかばい、零威の腕を引いて自分の後ろに回した。

「カメラ…新聞部の方ですか?」
「あらぁ、そんなに警戒しないで?私は新聞部なんかと違うわ!一枚の写真からあることないこと捏造する変人集団と一緒にしないで。私は写真部部長、三年の栗原翠よ」
「栗原先輩?」
「堅苦しいのは嫌いよ。みどりって読んで頂戴」
「あの、みどり先輩?なんで写真撮るんですか?」
「あらぁ、決まってるじゃなーい、私は写真部よ?美しいものを撮るの。そしてブロマイドに仕上げるのよ、ブロマイド!あなた達の写真ってもう需要があるのよ〜」

翠は嬉しそうに固まった三人に笑顔を向けている。
零威はかなり不審そうに朔夜の後ろから様子を窺っている。鞍羅も同様だ。

「さっきはいきなり撮っちゃってごめんなさいね、できれば三人とも了承いただいて撮らせてもらいたいんだけど」
「え、あの、ブロマイドって、作ってどうするんですか?」
「勿論売るのよ!一枚三百円!良心的でしょ?」
「あたし、嫌よ」
「あらぁ、剣さん、そんなこと言わないでぇ。うちの部員が教室で撮ったあなたの笑顔の写真、もう既に完売してるのよ」
「は!?」
「写真部はゴキブリのように何処にでも出現するからな」

翠に気をとられていると、その背後からまた声がした。今度は男の声だ。
嫌な予感がしたが、覗いてみると取り巻きを三人ほど連れた長身の男が立っていた。嫌な予感がするが聞いてみよう。

「…誰ですか」
「ネタの宝庫一年生三人…名乗ってやろう、俺の名は結城宰。新聞部部長だ」




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