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零威がくすっと笑うと、六人は救われたような顔をした。入学式から新入生の間でクールビューティーと噂になり、今では(本人は知らない)学校の噂になりつつある彼女がなんとも言えない笑顔で友達といってくれたのだ。それを聞いて周りのクラスメイトもなだれ込んできた。

「明日は私達と一緒しましょ!」
「ずるいぞ、俺達もだ!」
「だめよ、あたしたちとよ!」
「ちょ、ちょっとちょっと…」
「零威ちゃんモテモテだねぇ」
「白夜ちゃん、そんなところで見てないで助けて!」
「あはは、クラスの人と友好を深めるのはいいことだよー。…うーん、私もそうしようかな」
「白夜ちゃん?」
「あ、ごめんね、私さっきーが落ち込んでるのが気になっちゃって…」
「ああ、テストの出来が悪くて」

白夜はうなずいた。さっき来る前には机に沈んで食欲も出ないようだった。今日は昼休みで終わりだから急ぐ必要はないが、あのへこみようは半端じゃなかった。零威を呼んでくれば元気になるのではないかと来てみたが、この騒ぎでは連れ帰るのは難しそうだ。

「白夜ちゃーん」

どうしようか迷っていると、階段の方から声がした。朔夜をなだめているはずの恵の声だ。階段を振り返ると、恵と両脇をクラスの男子に支えられた朔夜が登ってくるのが見えた。

「恵さん、さっきー」
「え!?さっきー!?」

もみくちゃの順番取りをしているクラスメイトを押し退けて零威が教室の入り口にやってきた。へ組の教室は階段の隣にあるのでよく見える。対照的に朔夜はうなだれて顔がよく見えない。

「皇ィ、しっかりしろよぉ」
「へ組着いたぞ」
「恵さんどうしたの?」
「『零威ちゃんに会ったら元気でるかも』ってぼそっといったから連れてきちゃった。零威ちゃんて噂の剣零威さんのことでしょ?」

恵が快活に笑った。い組の教室からは結構な距離があるはずだが、ここまで引きずってきたのか。零威は呆れたような感心したような気分になった。まだ入学して幾日も経っていないと言うのに、こんなところでひきずってくれる友達がいるのか。ここまで心配かけられるなんて少し羨ましい。

「麻月、噂の剣を見られるから協力したけど」
「居なかったら捨てて帰るぜ」

なんと素敵な友情だろう。

「唐澤くん、矢野くん、剣零威ちゃんだよ」
「えっ」
「はじめまして、剣です」

零威が抱えている二人の方に軽く会釈する。男二人はしばらく見とれたあとニヤニヤと笑って朔夜を肘でつつき始めた。

「皇ィ、こんな可愛い子といつ仲良くなったんだよぉ」
「美人さん見るまで元気出ねぇってか?」
「俺達にも紹介しろよ、運んでやっただろ?」
「独り占めはよくないぜ」
「…かまし…」
「え?」
「やかましぃぃいいっ!零威ちゃんをやましい目で見るなぁぁああっ!」

朔夜はうつむいたまま叫ぶと、二人の腕を振り切って零威と白夜の方へ駆け出した。そしてそのままの勢いで零威を抱き締める。零威は短い悲鳴を上げたが、頭が何をされたか理解できていない。なすがままにされていると、教室の方でもクラスメイトの動きが止まるのが見えた。身長的に朔夜の首筋に顔を埋める形になっている。

「零威ちゃんは見て楽しむ!愛でて楽しむ!それ以外の不純な行為は例え言葉であろうと許さない!」
「す、皇…」
「零威ちゃんの一番の友達は俺なんだ!俺が見守らないで誰が守る!?会いたくて何が悪い!?愛でたら元気が出るのは当然だろ!?こんな可愛いんだから!キュートでビューティでスペシャルなんだから!」
「か、からかっただけだよ、落ち着けって、皇」
「ほんとよ!落ち着いて、そして離れて!」
「剣さんもとんでもないやつに好かれたのね」
「さっきーの女の子への愛情は底無しだね」




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