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お話に夢中で気づかなかったんだね、と白夜はころころ笑った。明らかに量が多い(二人前弱)朔夜の弁当と、ほとんど箸をつけていない零威の弁当。しかも三限のテストは数学だ。焦る零威。時計を見るとあと10分しかない。だが朔夜は冷静だ。

「何冷静に食ってんのよ!あと10分よ!?」
「零威ちゃん静かに。俺、食うの早いから大丈夫」

言うが早いか焦る様子もなく白米を口に運び始める。良く見るとあれだけ喋っていたのに、もう半分ほど減っている。いつの間に食ったのだ。零威は心で舌打ちするとがつがつと弁当を食らい始めた。

「!?」
「うわーさっきー早いねぇ」

横目で朔夜の方を見ると、もう更に半分なくなっていた。口許をみるとあまりもごもごしていない。数度噛んで飲み込んでいるのだ。体には悪そうだがこればっかりは早いのが羨ましい。

「ごちそーさまー」
「はぁ…残りは放課後食べよ…」
「今日は三限で終わりだからね。明日は二限、あさっても二限」
「テストはほとんど今日明日でやっちゃうのに、どうして三日編成なんだろうねぇ」
「知らないわ。特別授業があるらしいけど…」

朔夜もダンが作ったテスト日程をみて不思議に思っていた。きったない英語で三日目はスペシャルとかいてあったからだ。朔夜も零威も無償措置の一環としてその日まではできるだけ背後霊を連れてこないように言われている。と言うことは霊に関するなにかなのだろうか。

「さぁ行こう、帰りも一緒に帰るぞー」
「また一緒に帰るの?」
「当然です」
「私も途中までだけどいいかなぁ?」
「零威ちゃんちのそばだよね」
「ううん。私、春休みに引っ越したの。だから球磨ヶ根」
「およ。じゃあ駅までかな」
「うん」
「わかった、じゃあまず三限の公式を突破しよう!数学と明日の英語無くして俺の成績は語れない…」

見る間に朔夜と零威の顔が曇った。数学と英語は難関なのだ。正直成績の足を引っ張っている。重くなる足を引きずって、三人は各々の教室へと帰っていった。








テスト二日目、国語・英語

「零威ちゃん、お昼食べよう」
「白夜ちゃん。あら?さっきーは?」
「英語のできが悪すぎたらしくて教室でへこんでるよ。恵さんが慰めてる」
「けいさん?」
「うちのクラスのクラス委員長。面白い人だよ」

昼休み白夜が来て、心なしか教室中がそわそわしているように思えた。男女共に弁当やパンを抱えてひそひそ話をしている。女の子達は何人かのグループに別れて零威に近づこうとしてはためらっている。零威は折悪しくどのグループにも入り損ねていて、今日もやっぱり一人だった。

「なんか言いたいことがあるならはっきり言ったら?」

視線に耐えかねて零威がひきつった表情で教室に残っていたそわそわ組に声をかけた。会話が一瞬止まったが、今度はグループの代表らしき何人かが四方八方からじりじりと迫ってきた。零威はびっくりして飛び退く。なにか糾弾されるようなことしただろうか。最初に声を掛けたのは昨日の少女、真理だった。

「れ、零威ちゃんっ」
「な、なんでしょ」
「あの…その…良かったら…」
「良かったら?」
「私達もお昼ご一緒していいかしら!」
「へ?」

真理が渾身の力でそう言うと、同じグループの女子が三人、男子が二人駆け寄ってきた。そして口々に真理を褒め称える。他のグループは先を越された、と言う苦い空気で包まれている。零威は零威で安堵した。そんなことか。

「白夜ちゃん、いい?」
「私はかまわないよ」
「いいって。私も別に構わないわ。それくらいさくっと言ってくれれば良かったのに」
「ご、ごめんなさい、勇気がでなくて」
「勇気なんか必要ないでしょ、友達なんだから」




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