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零威の質問に朔夜は一瞬どもった。しばらくうつむいて考え込んでいたが、両手の指で指折り数え始めた。しかし両手の指を伸ばしてから更に考え込み、さらにしばらくして考えるのをやめた。

「いっぱい」
「嘘でしょ」
「いやほんと。三年の時は13個までは渡してくれた子覚えてるけど…靴箱やロッカーに入ってたぶんは…」
「モテてるじゃない!こんなバカのどこがいいの!?」
「全部義理でしょ?」
「義理チョコをロッカーに入れるか!」
「え、そうなの?」
「手紙とかついてなかったの?」
「あったよ。でもダンくんがみんな燃やしちゃった」

あの男か…。続く朔夜の話では、燃えてしまってお返しの行方のわからなくなったものは松本の案で自分のロッカーや靴箱にお返しを入れておいた、と言う話だった。後輩や友達に言伝てを頼んでみんな同じものを入れておくから持っていって、と言うわけだ。苦肉の策だが渡した方はショックだったろう。そのまま卒業したわけだ。凄くお金かかったよ、と笑って終わった。

「さっきーがそんなモテたなんて…なんか自分の美意識に自信なくなったわ」
「俺、抱きつき癖があるから引かれてると思ってた」
「え!?そんなんあるの!?」
「うん、男女構わず抱きつくの大好き」
「引くわぁ…」
「そう!その反応だと思ってた!」
「自覚はあるんだね」

白夜が苦笑した。零威は言いつつさほど引いていない。抱きつき癖があるのは知らなかったが、そんなものは個人の自由だ。それに抱きつかれてもさほど嫌ではなさそうだ。きっと、下心と言うものをまるで感じないから。

「チョコもらった時、チラッとでも自分に気があるとか思った?」
「ううん。俺みたいな奴にくれるなんて女神かと思った」
「告白はされなかったの?」
「手渡しでくれた子は何人か好きって言ってたけど…顔見知りの子は俺も好きだったからありがとうって言ったよ」

天然か。せっかくのチャンスをふいにしたのだ。しかも複数回。こいつは女の子に興味がないのか。女の子大好きと言うわりにはがっついた感がまるでない。

「あんた女の子と付き合いたいって思わないの?」
「思ってるよ。零威ちゃんみたいな可愛い子と付き合いたい」
「願い下げだけど…それなのに告白されても気付かないの?」
「告白?誰に?」
「チョコくれた女の子」

朔夜は首をかしげた。まるでわかっていないようだ。お前告白されてたんだよ、と突っ込みたくなった。世俗に疎い零威ですらバレンタインにチョコを渡して好きと言ったら告白だと知っている。面倒くさいがくどくどと説明すると、やっと朔夜は理解したのか真っ赤になった。

「そ、そっか…俺のこと好きってそう言う意味だったんだ」
「他にどんな意味があんのよ」
「『大好きだからお友達でいてね』って意味かと…」
「どんだけ鈍いんだよお前は!」
「だ、だって告白ってよくわかんなかったんだもん。俺、女の子は好きだけど特定の誰か好きになったことないし…」
「そうなの?」
「うん。女の子は愛でる対象だと思ってる」

零威は目を細めた。なんなんだろうこいつは。よくわからない。愛でる?愛でるって一体なんだ。零威は中庭のベンチに座っている何人かの女子生徒を箸で差した。

「じゃああの子は?」
「可愛い」
「あの子は?」
「可愛い」
「あの子は?」
「可愛い…女の子はみんな可愛いよ」
「あんた…」

朔夜は照れ臭そうに頭を掻いた。それを見て憎めなくて軽くため息をつくと、その向こうにいる白夜が見えた。まずい、さっきから会話に参加していない。昨日の調子で二人で話し込んでしまった。焦る零威に気づいたのか、白夜はにっこり笑って弁当の蓋を閉めた。

「私、聞いてる方が好きなの。二人ともおもしろいね」
「あ、白夜ちゃんごめん」
「ううん、ほんとに面白いの。それより早く食べないと三限始まっちゃうよ?」
「ああっ!」




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