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松本は耐えかねたように悲鳴を上げた。周りから見たらダンは常に無言だが、松本に対しても無言と言うことは何を考えているかわからない。松本は恐怖で振り向けないようだ。頭を抱えてうずくまった。

「ダンくん何か言ってる?」
「………」
「喋ってください博士ぇ!」
「………」
「…『今度は何をしようか考えていた。君には大概のことはしたからな』。ひぃぃいい!」
「いじめちゃダメ!」
「『朔夜がそう言うなら今回は目を瞑ろう』。こ、今回だけ…?」
「二度といじめるな!」
「『それは約束しかねる』。ええええぇぇ!」
「なんで一回拒否するの!?」
「『僕にとって実験は皮膚呼吸と同じだ。いくら朔夜の命令でもそれだけは従いかねる。それに彼以外に実験台がいないんだから…』」
「松本くんは君のおもちゃじゃないんだから!ダメ!実験は禁止!」
「『君は僕に死ねと言うのか』」
「もう死んでるだろ!」

必死で止める朔夜にダンは不満そうな顔をした。ダンの実験禁止には一同が内心で賛成した。もし自分の幽霊がここに来たら、松本の代わりに実験台にされるかもしれない。既に気に入らない片倉はターゲットになっている可能性もある。鞍羅は無言でナナを抱き寄せた。

「あの、実験て…幽霊の手術とかするんですかぁ?」
「『切開ばかりが実験じゃない。切り刻むのはこの上なく好きだが、幽霊の調査なんかも実験の一部だ』」
「例えば?」
「『霊力の強さや思考を伝える脳電波、幽霊が具現できる環境、結界の影響など』」
「そんなことしてたんだ」
「知らなかったの?」

零威が尋ねると朔夜はうなずいた。いつも夜中になると怪しげな研究をしているのは先に述べた通り知っていたが、内容までは知らなかった。朔夜はそんなに頭が良くないし、ダンは頭が良すぎて何を考えているのかわからない。ダンに関しては知らないことばかりだ。

「付き合い長いんじゃないの?」
「そう言えば物心つく頃からいるねぇ」
「それで知らないってどうなの」
「実験してることは知ってたけど…松本くんが憑くまで彼が喋ってるのかも満足にわからなかったんだよ?それに実験は主に夜中にやってるから」
「夜中に?」
「うん、それでも子供の頃はよく『実験室』に入れてもらったけど…中学校に上がる前には入れてもらえなくなっちゃったんだ。何やってるか訊いても喋らないし、書かせてもきったない英語で何書いてるか全然わからないし」
「悪質ねぇ。用意周到じゃない。余程あんたにばれたくなかったのね」
「『当たり前じゃないか。朔夜だけじゃないぞ。朔夜の家族にも話していない。バレたら狂人扱いだ』」

ダンは腕を組んで当然だ、と言う顔をした。おかしいと言う自覚はあるのか。松本が朔夜の元に来るまで一体何を実験台にして来たのか。怖くて聞けない。一同は息を飲んだ。




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