■ サディスティックシンドローム

※突然のホモ2




「あ、あっ…くぅ、あ、あ、あ゙!」

「…まっ、待て、ま──ヒッ! いぁ、っ、は…あ…っッ!」

「あ…サー、そこやめ、嫌だ、いっあああぁー…!」

「……※※※…」


◆ ◇ ◆


 目が覚めた。生きている。欠損部位なし。要治療箇所は多数。血が足りない。五感は正常。今回はそれなりにお優しくしてくれたらしい。
 ごろりとベッドの上で寝返りを打ち、まず血を作る。それから千切れた肉や筋繊維を作り直して、何種類かの鎮痛系物質の生成を促進。ついでに脳内麻薬もキメれば、何とか体を起こせるところまで回復する。
 俺はクロコダイルのごく私的な部下で、ついでにどうしようもないサディスト野郎のプレイメイトを半強制的にやらされている。偏に俺の悪魔の実の能力、自分の肉体を構成する物質なら何でも生成・複製・再生が可能だというそれのせいだ。でなければそれなりに賞金のついた屈強な三十路男をあの何様俺様クロコダイル様が相手にする訳がない。ナイスバディなお姉ちゃん方におモテになり腐るからなあの似非砂漠のヒーロー様は。
 SPとして雇われている割に最近はめっきり変態行為のお相手ばかりでそろそろ契約内容の訂正でも求めたいくらいだ。こんなボロクソにされてたら出来る筈の仕事も出来やしない。
 しかも自分が満足したらこっちのことなんて知ったこっちゃない風だし、一応余程危ない時は止血くらいしといてくれるがお座なりだし。あんな、治るからって人の指潰しながら舌舐めずりするような奴だから期待はしちゃいないが。しかも再生の時に痛覚神経取っ払っとこうかとした時には物凄く真剣にキレられたし。加虐は行為と相手──即ち俺の反応までがセットだって、そんなことは分かってんだよ馬鹿上司。だから嫌がってんだろうが。
 全く、相手が俺でなかったら今までに確実に何十回と死んでいる。いや正直な話俺だってちょっと危うかったことがあるくらいだ。サブの心臓と頸動脈って作っとくもんだなと切実に思ったぜあの時は。
 性的欲求からくる加虐、とは言えこっちを痛め付けながら煽るだけ煽ってヤらないなんてザラで(もしかして嬲ってるだけでイってんじゃないかとか思ったが気持ち悪過ぎるから却下、速やかに思考から抹消した)。別に同性愛趣味なんてないのに今や立派にケツ掘られて気持ちヨくなれるように開発されちまっただとか。熱っぽい声でより酷い暴力を振る許可を強請るのがちょっと可愛いななんて思ってしまっているとか。二人で取り決めている“待て”の言葉を口にすればきちんと止まってくれることに有り難みを覚え始めている辺り、俺ももう本当に末期な気がする。

「何呆けてんだ」
「うげぇその至極満足した感じのツラ見せないでくれよ疲労感が一気に振り切れる」
「何だもう治しちまったのか、アザくらい残しときやがれ」
「普通治すだろ! あーくそ喉いてぇ」

 突っ込むのにも疲れて起こしていた上体をベッドに投げ出す。傷は治せても体力は戻せないからまだご機嫌顔の変態に全力で突っ込める程の気力がない。嫌になるぜ、ったく。

「…18時からパーティーだ、仕度しとけ」
「はぁ? 今日は無理、ダズつれてけよ」
「表向きのだ」
「はぁあ? あんた馬鹿だろ…何でんな時にサカんの…あーもう……分かった、但し特別給付ないと動けませーん」
「餓鬼かテメェは」
「あ、先払いな」
「………取り敢えずこれで前金ってことにしとけ」

 そう言ってサラッと砂になったクロコダイルが、次の瞬間には距離を詰めて俺に深く口付けてきた。ぬるりと舌先が昨日の傷の上を的確になぞってきてぞくりとする。ついでに思い切り舌に噛み付かれてびくんと腰が跳ねた。最悪だ。

「ざ、けんな…馬鹿鰐、痛ェよ」
「昨夜散々強請られたんでな。欲しかったんだろう?」

 クツクツと喉が鳴らされる。全然覚えてない。やっぱり最悪だ。転職考えようかな。







一般人に特殊な愛情は上手いこと伝わりませんサー。

13.06.05


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