■ 貴方の隣で眠るのは屠殺を待つようなものだ
きし、とベッドが軋む音がした。不夜城のここでは目蓋の向こうに透けて見える日の光など時間を推測する材料にはならない。でも無視だ。私が寝た時間からして今は深夜。起きる義理はない。
隣で身を起こしたらしい奴は、するりと私の頬を撫でた。若干のちくちくとした感覚。あ、動物化してる。寝惚けた頭で思う。ということは前肢か。
微かに唸り声が聞こえて、ざらりとしたものが首筋を這った。猫科の舌の感触は少しだけこそばゆい。
──なんて、考えている場合ではなかった、みたい。
「いっ…ちょっと、ルッチ…!」
がぷりと立てられる牙。肉食獣の鋭いそれに、思わず悲鳴がかった声が漏れた。
目を開けば薄明るい室内と視界の端に映る体毛。私の首筋に噛み付いて、ルッチが緩く尻尾を振る。手加減されている、そうでなかったらとっくに首が千切れているから、けど痛いものは痛い。
非難じみた視線を向けても獣は素知らぬ顔だ。ゆっくりゆっくり尻尾を揺らして、少しだけ深くまで牙を突き立ててくる。
「…※※※、」
動物の声帯が器用に私の名前を呼んで、ぶちぶち噛みきられていく柔らかい肉の断末魔と血潮。死んじゃわない程度ならお好きにどうぞ、と私はそっと目を伏せた。
貴方の隣で眠るのは屠殺を待つようなものだ
(だから早く、)
ルッチ氏の体毛を何故か頭が勝手に銀鼠色にしていたけど普通に黄色だったね当たり前だね
13.06.04
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