■ お前のパンチラは萎える

※学パロっぽい




「不良教師はっけーん」
「ア?」

 如何にも不機嫌そうな声と共にぷかぁと煙が口から吐き出される。前時代的な不良みたいに屋上の柵に凭れ掛かって煙草──じゃなかった、葉巻をふかしているのはどこかヤのつく自由業みたいな顔をしたおっさんである。
 サー・クロコダイルという名前のこの人、これでも一応我が校の歴史教師だったりする。教師って柄か!って感じだけど本当にそうなのだ。因みに同僚の面々もなかなかに個性的なので、交ざると大して違和感がなくなるというか感覚が麻痺するというか、とにかく気にならなくなるのだが。
 で、その凶悪面な教師はただ今絶賛喫煙中である。年齢的にはそりゃあ吸っていいんだろうけど、校内は今のご時勢全面禁煙。殆どの愛煙家たちは狭っ苦しい喫煙室に入って肩身の狭い思いをしながら吸うっていうのに、一部の教師陣はまるで気にする素振りがない。その代表格が私の目の前にいるこの人だ。

「せんせ、肺真っ黒なんじゃないのー?」
「煩ェ不良娘。授業時間中だぞ、こんなところで何をしてる」

 ぎろりと睨み上げられる。クロコダイルは背が高いからこういう状況は滅多とない、っていうかとてつもなく貴重だ。というのも私が屋上に設置された給水タンクを点検する為の建屋の上に上っているからなんだけど。
 高みからクロコダイルを見下ろして、私は横に視線を逸らす。
 ついうっかり声掛けたけど、そういえば私はサボり中なのでした。だって今私のクラスは私が大の苦手としているドフラミンゴの授業中なのだ。私は何故だかやけに気に入られてしまっていて、毎度当てられまくるし何かセクハラ紛いのことをされたりもする。そりゃあ逃げたくもなるってもんである。
 それに比べてクロコダイルは最高だ。生徒に過度の干渉はしないし、そもそも授業中に誰かを指すなんてことは滅多とないし、何よりそのザ・強面フェイスが私の好みドンピシャなのだ。
 きっちりオールバックに撫で付けられた黒髪。深淵を覗き込むような切れ長の目、その中央に鎮座した気怠げな金の瞳。如何にも不健康そうな青白い肌。身に纏うのはブランド品なんてまるで知らない庶民でも一目で分かるような高級感漂うもので、雑誌のモデルばりによく似合っている。

「何してるって、クロコダイルせんせの観察中ー?」
「何だそのやる気のねェ言い訳は。さっさと降りてこい」

 くい、とクロコダイルが右手で手招いた。柵の上に無造作に投げ出された左腕の先には、ぽっかりと虚空が広がっている。何でなのかなんて知らないけど、彼は左手を失っているのだ。そうするお金はありそうなのに義手をつける気配もなくて、だからクロコダイルの左側はいつもどことなく寂しい。
 気になってじっと目を向けるけど気軽に尋ねられる筈もなくて、私は視線を青空に流した。溜め息にも似た吐息が薄く開いた口から押し出される。
 そんな私を怪訝そうな顔で見上げて、クロコダイルはそれから。




「※※※…早く降りろと言ってるだろう。お前のパンチラは萎える」




 などと平然と宣ったのだった。

「えっ?ちょっ、やだ何見てんの変態!セクハラ!!」
「誰が見たくてそんなガキ臭ェ下着なんざ見るか…おら降りろってんだ」
「そんな何人か殺してますみたいな顔で凄まないでよ!?すっごい降りたくない命の危険を感じるッ」
「死ぬ程降りたい気分にさせてやろうか」
「遠慮しますやだやだ降りるってば自分で降りる!」

 涙目になりながら渋々屋上に降りた私は、そのあと何故かクロコダイルの根城になっている社会科準備室で美味しいカフェラテを淹れてもらったりなどしたのだった。
 あれ?この人サボりを止めさせたいんじゃなかったの?………まぁいっか。







うわぁ色気ねェなどとド年下相手に考えてしまい自己嫌悪に陥って餌付けをするクロコダイル先生

13.11.5


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