■ 貴方の が触れるから

「※※※」
「なァに」
「それ、美味ェのか?」
「…あげないよ?」
「いらねェよ」

 小首を傾げて可愛らしく返答してくる※※※は体の半分程を赤に染めている。
 本人曰く刃物は無粋で、必ず歯と手でそれを解体しつつ食べていく。頻度は週に一度。モノは拘りがあるようでそうでもない。
 所謂ごく普通の“食事”は偏食もいいところで、栄養が正面に摂れているんだか甚だ疑問だ。

「相変わらず如何にも美味そうに食うからよ」
「んー…そりゃあ美味しいからねェ」

 どこかの骨から歯で器用に肉を刮げ落としながら、※※※は目を細める。猫のような笑みに俺もつられて笑みが零れた。
 背中に流れる黒髪を梳いてやると擽ったそうにころころ声を上げるから、まだ暫くは猛獣とその飼い主のままでいてもいいかと俺は思うのだった。




貴方のが触れるから




(美味しいよ、何だって)







踏み出せそうで踏み出せない、

13.10.03

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