■ 独白

 彼の指は冷たい。それでいて酷く暖かくて、優しい。だから私は彼を恐れて、彼に触れられることを恐れて、それでも逃れられはしないのだ。
 何故なら彼が私を求めるから。体だけでも、私の装った外側の部分だけだったとしても。彼が求めるのならば、それを拒むことは私には決して出来ない。
 その籠の中に止どまり続けるのは、己の意思ではない筈だった。そう請われたから。そう命ぜられたから。それが変質したのは一体、いつだったのか。
 分からない。けれど、既に違ってしまったことだけは確か。彼の低い熱に緩やかに溶かされて、私は。
 きっと落ちる先は無明の闇だ。







そんな温度は知りたくなかった。

娼婦さんの独白
13.05.29


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