■ サディスティックアウトブレイク

※突然のホモ3




「あー…ボス、出来ればそういうことはせめて帰ってからに…」
「ア?」
「いや、だから指に地味に力掛けるのを止めて頂きたくてですね?」

 とある表向きのパーティー会場だ。がやがやしている中でついさっきまで高級なシャンパンを傾けていたクロコダイルは、今や俺の指を弄んでいる。勿論人目につかない死角でではあるが。
 ギリギリと小指の関節を反対に向けようとする力は強い。そりゃあそうだ。“自然系”の能力者とは言え、この人だって結構鍛えている。胸囲なんかは俺よりも大きいんじゃないかと思う。まぁ身長差のせいもあるんだろうが。
 本来ならSPなんぞいらないだろうに、何だって俺を雇ったのか。全く理解出来ない。最近じゃ変態的な欲望の捌け口として選ばれたんじゃないかと思えてきているくらいだ。溜め息が出る。
 で、その変態な上司様は、密やかに俺の指をへし折ろうとするのを止めてはいない。寧ろみしみしと骨が軋みを上げるのに微かに笑みが漏らされる。あぁ、全く面倒な人だ。
 表向きのこういった場はクロコダイルには非常にフラストレーションが溜まる。それは俺だって分かっている。いつものあくどい顔をする訳にはいかないし、面倒な奴らの相手もそこそこしなければならない。だが──だからって何もその場で俺の指を折ろうとすることはないと思う。
 ちらりと伺ってみると、金の目には確かな苛立ちが映されている。これに気付かない奴らは何て鈍いんだと思うが、普通に見ればごく平凡な表情なのかもしれない。客観的に見てみれば、確かにほんの些細な差でしかない。

「護衛に小指は必要ねェだろう」
「そういう問題じゃあ、」

 チッ、っと小さく舌打ちが漏らされる。そうして俺を連れ立ってクロコダイルはずかずか歩き始めた。勝手知ったる何とやらである。
 廊下を進み何度か角を折れて、メインホールからは部屋数にして3つ、直線距離にして50メートル程遠ざかる。そうして引き摺り込んだ小部屋(一般庶民には十二分に大きい)で、クロコダイルは俺を壁に押し付けた。乱暴なそれで頭を強かに打つ。

「っ、いい加減にっ」
「※※※」

 ぞくりとする低音で名前を呼ばれた。いけない、と思うのに、俺はその声音に弱いのだ。パブロフの犬のような原理なのかもしれないが、そんな風に呼ばれてしまうとどうにも駄目だ。抗えない。
 悲鳴を塞ぐように濃厚な口付けをしながら、クロコダイルはホールから狙っていた小指をひと思いにへし折った。
 声にならない悲鳴を上げ、俺はクロコダイルの舌を噛んでしまう。それに眉を寄せて、それでもどうしようもない上司殿は俺を嬲るのを止めようとしない。薬指を一種愛おしげに撫でて、またもみしりと骨を軋ませる。

「クロコダイル…、ッ」
「…帰るか?」
「、一応、仕事なんじゃあ…」
「中座しても構わねェ。義理で仕方なく顔を出しただけだ」

 耳元で甘く囁かれる。それが更なる加虐を期待してのものだと分かっているが、俺は勘違いをしそうになる。いや、そうでもしなければやっていられない。
 小さく顎を引くと、砂漠の英雄様はクハハと至極満足気な笑い声を漏らした。







流され続けるわんわんお

13.07.27


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