■ コスプレ

 目の前に、俺のような格好をした奴が降ってきた。
 ピンクの羽コート、シャツにパンツに履いている靴からサングラス、髪型まで──気持ち悪いくらいに俺を写したかのようだ。ただ違うのは身長と性別だ。俺は紛れもなく男だが、掴んだ感触は明らかに女だった。その割には晒された胸元は貧相、というよりは完全に板だった。
 突然降ってこられて俺も驚いていたが、女の方もかなり驚いているらしい。濃い化粧の匂いを纏わせながら、ふるふる震えている。その口が俄かに開かれた。

「──ど」
「ど?」
「どどどドフィだ本物だやだぁ恥ずかしい消えてなくなりたい!!!」

 かぁっと急に顔を赤らめたかと思うと女は身を捩って俺の手から逃れ、ベッドに突っ伏してしまった。似たような格好でやられるとまるで俺がしているようで変な気分になる。
 というか何でこの女はこんな格好なんだとか俺を馴れ馴れしくも愛称で呼ぶんだとか、今更ながら疑問が湧き出してきて、俺は一先ず少しでも生き写しみたいな格好を止めさせようと、女からコートを剥ぎ取ったのだった。



「うう…だから怪しい者じゃないですっていうか初出しクオリティなんで忘れて下さいあと実際見ると結構髪色綺麗ですねウィッグの選択明らか間違えた…」

 女が滔々と語ったところによれば、どうやらこいつは俺のファンらしい。で、そいつのところじゃ好きな奴に扮して写真撮ったりするイベントがよくあるらしく、だから今日はたまたま俺の格好をしていたのだ、と。訳が分からないがそういうことらしかった。
 服をどこで手に入れたんだと聞けば、殆ど自作です、と答えが帰ってくる。それでしっかりサイズが合っている訳だ。よく見ればミシンをかけ間違えたような跡が見えて、苦労して作ったらしいことを窺わせた。よくやるもんだ。
 女は既にウィッグも化粧も落としていて、奇妙な装具も外せばそれなりに胸もあるらしかった。服はまだ俺とそっくりなシャツとズボンのままで、それがまた違和感を誘った。居心地悪そうに女は自分のサングラスをくるくる弄っている。

「…あーもうやだ死にたいトリップにしろ何で本人の目の前だよしかもコスイベ中だよふざけんなどうせなら鰐ちゃんとこのが、いや即行で枯らされるでも本望だわそんな死に方なら万々歳だ」
「……何ブツブツ言ってンだ」
「いいいいいや何でもないですってか近くないですかドフラミンゴさん近い! 心臓に悪い!」

 上から覗き込むと女はあからさまに赤面して距離を取ろうとする。敬語な割にはどこか馴れ馴れしくて、個性的な部下たちの中にもこういうタイプはいねェから面白かった。
 戯れに首筋を舐めてみたら素っ頓狂な声を上げて部屋の隅まですっ飛んで逃げたから、暫く追い回して遊んでやった。どうやら俺はいい玩具を手に入れたらしい。







レイヤー系女子と。

13.07.08


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