■ ムダヅモなき頂上戦争

※鰐娘(エンパイアローズ)設定






 扉を開いた途端、クザンは急激に帰りたくなった。何故なら会議室である筈のそこに見慣れないテーブルが出現し、尚且つそれを凶悪な面々が囲んでいたからだ。

「あー…おたくら何やってんのよ」

 問えばぷかりと葉巻の煙を吐き出した才女の視線がクザンを捉える。手にした小さな牌を机の上に置いて、彼女は声を吐き出す。

「あら大将、ご機嫌よう。見ての通り麻雀ですけど、交ざります?」
「いや…嫌な予感しかしないから遠慮するわ」

 机──麻雀卓を囲んでいるのは南家がクロコダイル、西家がドフラミンゴ、北家が※※※、東家がミホークである。何順目だか知らないが既にある程度の時間は経っている様子だ。南北の喫煙者が吐き出す煙を周囲に充満させながら、サイドテーブルには酒のボトルすら置いてある。完全に遊戯に耽っているようだ。
 会議だったんじゃないのかと視線を巡らせれば、少し離れたところに中将や元帥が死屍累々の体で転がっている。その中にガープの姿を見付けてそろりと近寄ると、落ち込んでいるらしい顔に少しばかり生気が宿る。

「アレ、どうしたんですかガープさん」
「いやの、あの雀卓ワシが持ってきたんじゃが──」

 センゴクに会議の場にそんなものと怒られていたら七武海が現れ、更にドフラミンゴの腕に至極嫌そうな顔をした※※※まで抱えられていて、麻雀卓を見るなり「一局打とうぜ」などということになったんだそうな。何を馬鹿なと却下しようとしたものの、海軍は勝負から逃げるのかと言われては素直にはいそうですと言うのも躊躇われ。何故かトーナメント式で始まってしまったそれで、勝ち残ったのが今卓を囲んでいる面子らしい。
 地味に握っていた連中もいて、死屍累々なのは主にそういう理由らしかった。どう見てもイカサマ満載のメンバーじゃないのかと勝ち組を見てクザンは思う。が、チラチラ見ている限りではそんな様子はない。

「フッフッ、引っ掛かったな鰐野郎。ロン…リーチツモ七対子ドラドラ裏裏だぜェ」
「ぐっ…テメェ…」

 どうやらハメられたらしいクロコダイルが眉間に皺を寄せる。点計算係を無理矢理やらされているドーベルマンの記録を見る限り、敗けが込んでいたドフラミンゴはこれで一気にその分を取り戻したようだ。
 機械卓ではない為、牌を混ぜるジャラジャラという音が響く。誰もが慣れた様子で山を手早く積むと、また一局。今度はミホークが早鳴きで和了り、再び配牌がされる。
 そうして山が半分程消費された時。慌ただしい足音と共に扉が開かれ、一瞬立ち止まった海兵が敬礼を示した。クザンの記憶が正しければ彼は※※※の副官だ。と思っていたところでその海兵は淀みなく※※※に近付き、何事か耳打ちする。

「──分かった。……残念だけどここで抜けさせてもらうわ」
「えー※※※ちゃん行っちまうの?」

 如何にも残念そうな声をドフラミンゴが上げたが、返されるのは不敵な笑みばかりだ。

「どうせツモって白切ったら私の和了で全員トビよ」

 にこやかに言い置いて※※※は悠然と去っていってしまった。
 ドフラミンゴが手を伸ばし、※※※が手にする筈だった牌を卓上に置く。そして開示された手牌から白を捨てて新たに引いたものを加えれば。

「あららら、親で大四喜・四暗刻・字一色の四倍満? 生で初めて見たわこんなの…点数幾つよ?」
「あー…親だと240000点です、ね」
「やっぱ俺参加しなくてよかったわ」

 卓上に並んだ牌は北北北西西西南南南東東東中中という美しい並び。青天井ルールならばとんでもない点数が叩き出されていた和了り手である。
 これには流石の七武海の面々もぐうの音も出ず、突発的な麻雀大会は屍の山を築いてにお開きとなったのであった。







如何にもカードの方が似合いそうだけど麻雀なのは完全に趣味です。

13.6.29


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