■ オーロラの を食してみたい

 肌は褐色。髪は黒。瞳は底抜けに明るいサファイアブルー。
 それが※※※を形作る色彩だ。
 それからそこに鮮烈な、赤が足される。※※※の“お食事”には付き物の色。新鮮な肉を食い破って溢れさせた、思わず吐き気と食欲を催す色だ。
 だがまぁシャワーを浴びてさっぱりした後にそういうことは滅多とない。うん、ないと思う。夕方しっかり飯食ってたし。
 で、シャワー浴びて一息吐いてる俺達はいい感じの雰囲気だったりするんだが。何故か飼い主とペット──いや、飼い主と猛獣?な関係が定着しちまってて、こいつとそういう行為に雪崩れ込んだことは未だ嘗て、ない。
 この俺が、ドンキホーテ・ドフラミンゴがベッドを共にした女に手を出さないなんて!それも一度や二度じゃなくもう何ヶ月にもなる。不能になった訳じゃあ断じてねェし、※※※に色気がないんでもねェ。なのにどうしても塗り潰せない、近くて余りにも遠い距離感。
 ちらりと視線を向けると、俺を悩ませる張本人はそんなことはこれっぽっちも知らない顔で、窓の外を見上げていた。ソファの背にだらりと体を預けて顎を反らせた体勢で。器用なことしてやがる。

「…何見てンだ、※※※」
「んー」

 あのねェ。
 少し間延びした独特の声音。ぱちりと一度瞬きをしてから、きらきら光る瞳が俺に向けられる。真っ直ぐな視線、憚らないそれは心地好い。




オーロラのを食してみたい




 直後にそんなことを言われて、俺は思わず笑ってしまった。こんな時まで食い気かってのと、意外にもロマンチストじみたことが言えるんだなってので。冬島が近い、空には確かにオーロラが煌めいていた。



(だってあんなに綺麗で、
 近いのに遠くて、
 まるで貴方みたいで、
 でも全然──違う、から、)







共寝はしても同衾はしないその距離感のもどかしさ、

13.06.25

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