■ いつか同じ輝きに殺される
「クロコダイル、」
そう言って腕を絡めてくる女の唇は甘い。それに緩やかに応えながら、砂漠の夜に宿る仄温かい体温を抱き寄せる。
ふふ、と女は擽ったそうに笑い、人懐こい猫のように首元に体を擦り寄せてきた。
目立つ特徴のある女ではない。オアシスにひっそりと咲く小さな花の風情だ。だが、だからこそ掛け替えのない程に美しい。
「何を考えているの?」
顔を覗き込んでくる瞳はきらきらとした深いアメジストパープル。この女といるその時だけは、肩肘を張ることなく穏やかでいることが出来る。だからこそきっと、
いつか同じ
輝きに殺される
「…何でもねェよ」
そう言って触れ合わせた唇、それが残酷な別れを告げるまでに、残された時間は幾何か。
分かっていてもどうしても散らせなかった一輪の花。
13.06.24
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