「ナインのばーか!」
「ああ?テメェのほうがバカだろうが」
「オリエンス四大国の名前も言えない人にバカなんて言われたくない」
「んだとコラァ!」

毎日毎日わたしとナインは同じような口喧嘩をしている。いい加減飽きないのかとよくキングとクイーンに聞かれるが、そんなこと一度も思ったことない。ナインはどうだか知らないけど、少なくともわたしは。こう答えると必然的に何故と理由を求められる訳で。「…友達、だから」結局いつも同じ返事。本当はもっと、深い意味がある。でも言わない、言えない。彼が好きだから変な意地を張ってしまうことも、彼が好きだから甘さと無縁の口喧嘩でさえも嬉しくなってしまうことも。


そして今日もわたしとナインは喧嘩をしていた。先週受けた試験の結果が返却された直後の休み時間に向こうから自信満々に何点だったか聞いてくるものだから渋々解答用紙を交換した、というのが今回の発端。案の定ナインの点数はわたしの点数を大幅に下回っていて。本当に貴方は期待を裏切らないですね、とわたし達を横目に皮肉を飛ばすトレイに内心激しく頷いてしまった。どうしてあんなにも、俺良い点数だったんだぜ、と言っているかのような表情をしていたのだろう。つくづく彼は面白い人。ほら、自然と唇から笑みがうまれる。
あ、眉間に皺寄った。

「笑ってんじゃねーよ」
「だって!…ナインてほんとばかだよね」
「ああ?うっせーんだよ!」
「ばーか」
「おまっ…」
「ばかばか」
「まだ言うかコノヤロ、」
「ばか、だけど……すきだよばか」

……。
………。
…………。
長い長い沈黙がわたし達の間をすり抜ける。無意識の意味を身をもって知った瞬間だった。わたし今なんて言った?言っちゃった?その答えを証明しているのは、おそらく、目の前で真っ赤になっている彼ただ一人。

「あっ…ナ、ナイン、あの、ね」
「……」
「今言ったことは、その、」
「……れの方が」
「え?」
「俺の方が好きだっつうんだよ!」
「!」



「……お二人とも分かってますか?ここは教室ですよ?」
「「!!」」
「よ〜やくくっついたね〜あの二人〜」
「ずっと両想いだったってのにね」