「昨日ケイトと依頼だったよね」
「ああ」
「…そっか」
「?」



言えない。ケイトとふたりで依頼を受けた、たったそれだけのことに妬いてしまったなんて。
依頼はわたしたちの独断で選べるものでは決してない。町人から頼まれるものもあれば隊長や他組の生徒から回ってくるものも中にはある。今回エイトとケイトが受けたのも、諜報部からの極秘任務だった。わたしはどちらかと言えば回復魔法が得意、だからかあまり少人数で構成される単発の任務には声がかかったことはない。ふたりが選ばれた理由も明確だ。エイトは接近戦だけじゃなく治癒能力にも長けているし、ケイトは女子の中で一番の素早さを持っていて遠距離の敵にも柔軟に対応出来るスキルを持っている。
頭では分かっているのに、どうしてこうもやもやした感情が沸き上がってしまうんだろうか。

裏庭のベンチに座りながらひとつため息を吐いたら、忙しなく動いていたエイトの身体がぴたりと止まる。するとこちらへ近づく足音。隣のスペースに彼は腰を落とした。


「…明日、ジャックとトゴレスに偵察だったよな」
「っえ、あ、うん」
「油断するなよ」


こんな風に心配されたのは初めてかもしれない。不謹慎だけど、ちょっと嬉しかった。
明日は偵察だけだしそれにジャックと一緒だから大丈夫だよ、と言ったら何故かエイトの顔が更に曇った様に見えたのは、わたしの気のせいだろうか。


「エイト?」
「……アイツの前では隙を見せるなってことだ」
「アイツって、ジャックのこと?」
「ああ」


なんで、と聞こうとした声の続きは彼に消されてしまった。


「お前と同じだよ」
「えっ…」
「ケイトに妬いたんだろ?」
「!な、な」
「それと同じだ」
「へっ?…て、いうことは」
「………」



つぎはきみとがいい