侑士からの頼みごとを聞いた直後、謙也は自分から勢いで電話をぶち切ったものの、しばらく何事か考えてからふらりと居間に下りて行くと、家族共用のPCを立ち上げて(お父さんだけは仕事の関係でマイノートパソを自室兼書斎に所有していて、他の家族は居間のPCを兼用しているとかあればいいです)、検索ワードに『大阪 匂い缶』と入力。
検索結果の先頭に土産物屋のいちびり庵(本当にあるよ)と表示されたのを見て、「これか〜?」とリンクをクリック、表示されたのは確かに何か妙な按配の匂い缶の通販ページで、「あ、多分これやな。ちゅーか、えー、なんやねん、通販しかないんかいな。てかあいつも通販あんねんから自分で買えっちゅーねん…ブツブツ」としかめっ面をしていたら画面上部に『店舗情報』のリンクが張られており、すかさずクリックして所在地を確認。
すると所在地は中央区難波、「何やこれ、めっちゃ近いやんけ!」ってなる謙也。
そうすると何か、何か「まぁちょっと見にいってやってもええかな、むっちゃめんどいけど」という気持ちになって、しかし営業時間までばっちり把握して翌日学校終わりにでもダッシュで店に駆け込み、物とご対面。
ちなみに匂い缶は下記の3種類があります。
・道頓堀 厚化粧の香り〜道頓堀に芝居を観に来たオバチャン〜
・北新地 うなじの香り〜着物が似合う北新地のママ〜
・天保山 思い出の香り 〜初めてデートで乗った観覧車〜
しょっぱい顔で三種類の缶のラベルに交互に目を通しつつ首を傾げて、「なんちゅーラインナップや。ちゅーかあいつこんなん買うてどうするつもりやねん。……ネタかな、やっぱり。それなら2〜3個でええとか言うてたけどとりあえず仰山送ったった方がええよな。しょーもない物仰山送られたきたっちゅーネタが一個増えるし。パシりまでして笑いのネタまで提供したる俺ってめっっっちゃええ奴やなっ」と、瞬時にそれだけ考えて、謙也は手当たり次第数量を買い漁るとわざわざ自宅で箱詰めして東京の侑士に送りつけてやるわけです。
店で発送を頼むという発想は(洒落じゃないです)スコーンと抜け落ちていて欲しいというか、「わざわざ箱詰めまでしてやる俺!」っていう恩を上乗せする目的があればいいと思います。
ところで匂い缶は1つ五百円もするわけですけど(一般家庭の中学生にとって五百円は大きいと思うんですけど)、なんせほら、ペアプリによると謙也は(まあ侑士もでしょうけど)福引券が欲しいが為だけにWiiとか買っちゃうような金持ちのボンボンなので、謙也にとってはそれくらいの出費は痛くも痒くもないと思います。しかも自分の物じゃないから、無駄遣いしてしまった!っていう後悔もありません。
中学生時分からこんな金銭感覚してたら将来色々と苦労しそうな気がするんですけど、どうなんでしょうね。
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