包み隠さず言おう、これは初恋だと。おれは世の中のあらゆるレディを愛したいと思い生きてきたが彼女だけは違った。愛、なんて言葉で言い表せるような感情じゃねェ。彼女の声は鈴の音のように澄んでいて耳に心地よく響くし、彼女の瞳に映る世界はとても綺麗だ。彼女が笑えば辺りに花が咲くなんて言った日にはウソップから本気で心配された。失敬な。
彼女の笑顔が見れるならおれはなんだってできる気がする。

だからと言って他の野郎に取られるなんざ、絶対に許さねェ。男サンジ、勇気を出してデートに誘った。そりゃあもう、しどろもどろに恥ずかしくて死んじまうかと思った。デートだと意識して貰いたくて、集合場所はメリー号ではなく島の広場。ナミさんにも協力してもらってなんとかデートだと伝わったみてェだ。(ありがとうナミさん!好きだ!)すでに3番目のタバコに火をつけて待っていたおれの前に現れた彼女は天使だった。

「ごめんね、お待たせ」

ふわりと揺れる髪、いつもより少しだけ大人びて見えるワンピース姿のなまえちゃん。す、好きだ!普段よりもずっと女の子らしく見えてドキドキした。そんな気持ちを悟られないように、必死で平静を取り繕う。

「いや、全然待ってねェよ」
「そっか、良かった」

そう言って微笑む顔はやっぱり可愛かった。このデートが終わるまで鼻血は出さねェと心に誓った。

「じ、じゃあ行こうか……お手をどうぞ?」

手を差し出すと頬を染めながら小さな手が重ねられた。指先が触れ合うだけで心臓が爆発しそうだ。繋いだ手の温もりを感じながら歩き出した。

「まずどこに行くんだっけ?サンジくんが考えてくれたんだよね。その……で、デートプラン」
「うん、とりあえず服を見ようかなって思ってるんだけど……どうかな?」
「えぇ、私あんまりオシャレとかわからないからなぁ。でも楽しみにしてる!」

嬉しそうな笑顔を見て胸がきゅんとした。

服を見始めてはや数時間、あの手この手で褒めちぎれば顔を真っ赤にした彼女が照れ隠しなのか怒ってきたりもしたが、とても楽しい時間を過ごした。そして、あっという間に夕方になり空には星が見え始めた頃、おれたちは海沿いのベンチに座っていた。ふいに彼女を見れば、眉を下げて寂しげな表情を浮かべている。もしかして楽しくなかったのか!?プランZの方が良かったか!?不安になって慌てて声をかけた。

「ごめん、退屈だったかな。おれ、夢中になっちまって……」
「違うの、退屈なんかじゃないよ。すっごく楽しかった!ただ、今日が終わっちゃうのが悲しくて」

どくんっと心臓が跳ね上がった。神様、これは脈アリのサインですか?それとも試練でしょうか。思わず叫びそうになった言葉をぐっと飲み込む。

「なまえちゃんさえ良ければまたデートしよう」

彼女の手をとり真っ直ぐに見つめると大きな瞳が見開かれた。そのまま吸い込まれてしまいそうになる。

「いいの?」
「もちろんだよ」
「嬉しい。次は私がデートプラン考えるからね!」

得意げに笑う彼女に愛しさが溢れてくる。彼女にとってのデートの定義がわかんねェけど、次があると思うとそれだけで幸せだった。

「じゃあメリー号に戻るか。ルフィが腹空かせてるだろうし」
「だね」

二人並んで船へと続く道を歩く。繋いだ手に力を込めるとなまえちゃんも同じ様に握り返してくれた。たったそれだけのことなのに泣きたくなってくるほど幸せな気分になる。このまま時間が止まっちまえばいいのになんて、柄にもねェことを思った。

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