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▼ 不老不死の勧誘

なまえは普通の女子高生だ。
自分とちがって卒業アルバムだって持っているし、こんな散々な目に遭った今もなお学校に通っている。そう。自分と違う時点でそこには「普通」がありふれている。そんな彼女が少々羨ましい、と思っていた。
なまえの家まで歩きながら、俺はジーナスに言われたことを整理する。ジーナスによると、なまえはリミッターを外しかけている状態だという。そのリミッターが解除されると彼女はさらにサバイバルに強くなり、生存率が上がる。しかしその力の発揮には何かを犠牲にしなければならない。その「何か」は現時点では何なのかわからない。犠牲にするものは大切なものである、という確信はないが、大切なものである可能性も捨てきれない。それが何なのか。わからないうちにはリミッターなんて外させるべきではないと思う。それに、なまえが「普通」を捨ててサイタマのように超人的な力を手にいれる。

いや、
「(そもそもなまえは「普通」のままを望んでいるのか……?)」

なまえと出会ったきっかけとその後。あのときなまえは俺の特殊な体質を心底羨んで、「普通」の体質を捨てたがっていたじゃないか。リミッターだって、彼女自身が命の危機にさらされたときに外れそうになっている。リミッターを外すことはなまえの自己防衛能力が常日頃から最高強度で保たれるということかもしれない。
「なまえは……どうしたいんだ……?」
「ゾンビマンさん、呼びましたか?」
「のわっ?!」

突然ゾンビマンの顔を覗き込んできたなまえに驚き、ゾンビマンは跳ねるように後ずさりをする。

「急に現れんなびっくりする!なんでここにいんだ」
「いや、ここ通学路です」

にこにこと微笑んでいるなまえに不安感を抱く。嫌な予感がする。

「そういえば、ゾンビマンさん、聞いてください」
目をキラキラと輝かせながら。初めて会った時に自分に向けた瞳とは真反対の瞳で。
「さっき、ジーナス博士から連絡があって、わたし、不老不死の手術をしてもらえることになったんです。」




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