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▼ あの子を除けて

「どういうことだ、説明しろ」
暗い色のコートは重たそうに風を受け止めていた。その男のコートから取り出された銃口は、その場にいるもう一人のメガネをかけた男の後頭部に押し付けられている。
「久しぶりだな、66号」
このような状況にもかかわらず、落ち着いた様子で、メガネの男ーージーナス博士は笑みを口元に浮かべ、返事をする。「説明しろっていうのは、いったい何を?」
「とぼけんじゃねぇ!なまえのことだ!てめぇが怪人をあいつのところに送っていたんだろ」
「ああ……君の大切なガールフレンドのことか?」
「ふざけた言い方しやがって」
「大切なのは、図星だろう?心配するな、もともと彼女に危害を与えるつもりはない。」
「危害を与えるつもりはないだと?!じゃあなぜあんなことしたんだ」
銃口をぐいとさらに強く押し当てる。ジーナスの頭が揺れる。
「答え……やがれっ!!」
ゾンビマンの眉間には深いシワが寄っていた。
「落ち着け、ここでわたしを殺したところで、結局わからずじまいだろう。」
「……っ」
「君は来客だ、茶を出すよ。店の中の座敷に座って待っててくれ。」
「……チッ」
店の前にいた二人は店の中に入る。ゾンビマンはやり場のない怒りを吐き捨てるように乱暴に座敷に座り込んだ。コートを着ているのも落ち着かずに、ガチャガチャと乱暴に脱ぎ捨てた。

昨日、ゾウの怪人が二人の前に立ちはだかったとき、なまえはネオジム磁石を使ったガウス銃で戦いに挑んだ。高濃度の睡眠薬を塗った鉄球はなんとゾウの鼻の中の粘膜にあたり、睡眠薬はすみやかに吸収され、ゾウはすぐに深い眠りに落ちた。その後、騒ぎを聞きつけたヒーロー協会の人々がゾウを回収した。なまえは極度の緊張から解放されて、家に着くやいなやすぐに眠りに落ちた。今日は普段どうり学校へ行っている。ゾンビマンは朝、なまえを学校へ送ったあと、火器の準備をして、このたこやきの家にやってきていた。
不可解なのは、なまえが持っていたガウス銃の存在だ。それはジーナスから預けられ、それなのに怪人を送っていたのはジーナスだということだ。なんで、いったい。何の目的で彼女にガウス銃を与え、怪人を送り込んだのか。
まとまらない考えになんともいえない怒りを感じる。「くそっ!」自分の太腿を拳で強く殴った。手には汗をかいている。

「準備ができた、ほら」
カチャカチャとジーナスは緑茶と茶菓子のカステラを木製の盆に乗せて持ってきた。
「…………毒は入ってねぇだろうな」
「入れてどうするんだ」
「はっ。何せまだなんでお前がなまえに怪人を送ったのかもわかってないんだ、信用もクソもあるか」
「じゃあいいお前の分のおやつはなしだ」
そういって、ゾンビマンの分のカステラをひょいと持ち上げ一口で頬張るジーナス。
「…………」
「…………」
「……俺の分は」
「なんひゃ、ふぁへるふほりひゃっひゃほふぁ(なんだ、食べるつもりだったのか)」
「……いや、なんでもない」
ジーナスが緑茶でカステラを流し込んで、シリアスな顔を作った。
「さて……君にわかるように、単刀直入に、わかりやすく言おう」
「馬鹿にするなよ」
ジーナスは『赤い目』をしっかり捉えて言った。

「彼女はリミッターを外しかけている。わたしは彼女のリミッターを外したい。」




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