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▼ 耳掃除プロジェクト

家に帰ると机の上に可愛らしいピンク色のポンポンしたファーがついてる耳掻きが丁寧に横にして置いてある。買った覚えはない。風呂を上がってきたソニックが石鹸のいい香りを振りまきながらタオルで髪の毛ををがしがしと拭いた。ていうかなんで勝手に人んちの風呂に入ってるの。なんでわたしのタオルが勝手に使われてるの。

「帰ったかなまえ、遅かったな」
「なんでいるのよ帰れ」
「風呂借りたぞ」
「んなこと聞いてない、来るなら来るで連絡してよ」
これはマジで頼む。アポ無しで来られると困る。わたしだって部屋を片付けたりしたい。見苦しい部屋は見せたくない。

「そういや、風呂上がりの耳垢は湿ってるから取り易いんだそうな」
「会話のキャッチボールができない人ね腹立つ」
「あーあ、誰か耳掃除してくれないかなァーーチラッチラッ」
「口に出してチラッとか言うのやめてくれない?」

ああ、そうか。ここに耳掻きを置いたのもソニックなわけか。
わたしはソニックの目の前に耳掻きをすっ、とかざす。途端にソニックの顔が、ぱあっ、と輝く。ばかめ、そんな簡単にわたしが期待に答えるわけなかろう。わたしは両端を両手で掴み、ぐっ、と力を入れて耳掻きを折ろうとする。

「わーッ!!!なまえ貴様何をする!!やめろ!!折るな!早まるな!」

汗を飛ばしてわたしの反逆を止めようとするソニック。真っ青になって慌てるソニックに顔をめがけて耳掻きをダーツのように投げる。相手に刺さるわけもなく、お得意の素早さで顔に当たる前に人差し指と中指でそれを挟んだ。どやぁを見てくるのむかつく。その視線を折りたい。バキッって折りたい。

「なんでそう耳掃除を頑なに断るんだ!!恥ずかしいのか?!なぁなまえ!」
「あーもうくそ……こっちきて、ほら横になって」
なんてめんどくさい忍者なんだ。第一断った覚えはない。一度耳掃除したら気が済むだろう。変な気起こしたら耳に耳掻き棒突っ込んでやる。

「クッションなんぞじゃなくてなまえの膝枕がいい」
「はいはい」
部屋の照明で耳の中が見えるような明るい場所を選んで正座し、横になるソニックの頭を腿に乗っける。
もうちょっと上に体ずらして、と声をかけると、もぞもぞと言う通りに体を動かす。
長い髪を頭の上に上げ、耳にかからないようした。少し乾いていて、猫っ毛の柔らかい髪は癖がなく、さらさらと流れていった。
暗い耳の中を部屋の照明の光で見えるようにと、耳を軽く引っ張った。

「ああっ!」
「…………え?」
ビクッとソニックの体は跳ねて、妙に艶かしい声を出した。なにこいつ。思わず手を放してしまったじゃないか。
「あ……感じるッ」
「黙れクソ忍者。耳触る度にやらしい声出すなきもい。次声出したら耳掃除やめるからね」
「わかった……」

それから耳掃除をしていったけれども、思った程は耳垢が無くて、清潔そのものだった。わざわざ耳掃除頼まなくていいじゃん。

「なまえのふとももふわふわしてる」
「ソニックあんたわたしが太ってるとでも言いたいのか?あ?」
「これはやみつきになるふともも」
「やめてふともも連呼するの恥ずかしい」




2013/08/04



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