zzz | ナノ





▼ 無意識な有意識


今、わたしは呼吸ができている。無意識にできている。
ちょっと、軽く息を止めてみる。止められる限界がわからない。鼻や口以外のどこからかからも息を吸っているのではないだろうか、というくらいに長い時間止めることは余裕なことであった。特に頭もくらくらしない。限界がわからないことが、いつ気がつかないうちに死んでしまうか、と怖くなってしまい、限界を知らぬまま再び呼吸を始める。





ゾンビマンは、自分を不死身にした博士は研究をやめているし、不死の体も偶然にできたもので、不死身を持つものは二人としていないといっていた。わたしが不死身になるのは不可能だと、そう伝えたかったのだろう。しかし、現に、目の前には不死身を持つものがいたのだ。わたしが不死身になれる確率はゼロではない。

これほどにまで、執着してしまうとは。
あの日から、学校へ登校する道、授業中、休み時間、暇さえあればゾンビマンのことばかり考えている。精密に言うならば、彼の不死身に関することばかり、だ。


あきらかに集中できていない。
まずいな、と思っても考えるのをやめることはできなかった。無意識に、ゾンビマンを意識している。

それは周りの人から見ても、明らかだったようで、あまりにわたしがぼーっとしているから心配された。

「ねえってば。」
「あ、ごめん、なに?」
「なまえ、大丈夫なの?名前呼んでも全然反応ないんだもん。いくらなんでもぼーっとしすぎてやばくない?」
「そーかな……」
「なんかあるなら、相談乗るよ?」

言えるわけないじゃないか、死にたくないから永遠に生きる方法、つまりは不死身になることを考えているなんて。
どうせ、この友人たちはこのような悩みを持ったことなんてないのだ。理解される訳がない。
友人たちのことは好きだがこういうときに、内面的な孤独を感じて、ほんの少し苛立ちを覚えてしまう。彼女らは何も悪くないのに。


「あー、わかったわ、なまえがぼーっとしてる理由。」

見透かしてる、といった表情を顔に浮かべる友人。ばれた?まさか、そんなわけ、あるわけない。



「さてはなまえ、好きな人ができたんでしょ。」



「……は?」

「そういうことはね、相談していいんだよ、むしろ楽しいから……ゲホンゲホン……ガンガン相談してよ!」
「いや違うよ?」
「なかなかそういう話題にならなかったから遠慮してたのかもしれないけどさー?」
「いや、あのだから違う」
「わたしでよかったら全力でサポートするから!!」

めっちゃ目えキラキラして言われてるわ。すごく勘違いされてるわ。

「別に好きとかじゃなくて――――気がついたらとある人のことを考えてるだけだって。」
「それ、恋っていうんだよ?知らないの?」

いや、違うと思います。
ただ、わたしは不死身的な意味で
「相手の体を欲してるだけであって」
「なまえったら大胆だなあ〜〜!」

確実に誤解されてる。



「また会いたいな。」
「もしかして、一目惚れだったの?」


ああ、そうかもしれない。
わたしは、彼の能力に一目惚れだったのかもしれない。






prev / next

[ back to top ]