▼ こっち向いてよ!エンジェル☆
「プリズナーさぁーん、ちょっと、ねぇ、待ってくださいよ。」
ずっとプリズナーに呼びかけているからなまえの息も切れぎれになってきていた。
何故だ、なぜこの人は振り向かない。若いおなごがこんなにもアプローチをしているのに。プリズナーさんはわたしに背中を向けてすたこら歩いていく。いや、ぱっと見た目はズシンズシンって感じだけれど、さすがはエンジェル、床は壊さずに軽やかに歩いている。そう軽やかに。わたしにはプリズナーさんの行動はすべてプラスに見える。
「ねぇプリズナーさん、わたし、あなたのこと好きなんです。」
「からかっているだろ、俺が男子にしか興味がないからって。」
「違いますってばぁ!!からかってなんかいませんよ!」
せめて止まって、わたしの方を向いて、わたしの言葉に答えて。
彼の趣味なんてわたしは一切気にしない。もうこの際わたしの、プリズナーさんが好きという気持ちが受け止められればそれでいい。だからこっちを向いて、わたしを見て!わたしを見て答えてよ、プリズナーさん!
わたしの告白を受け止めもせず、その強靭な肉体で跳ね返すなんて、そんなのは望んでいない。
受け止めてよ、がっしり受け止めてよ、その体で。
「もう、迷惑なんだ、いいかなまえ、もう一度言う、迷惑なんだ。そんなに俺につきまとう暇があるなら……俺が好きなら、俺のためにナイスな男子を連れてきてくれればいいのに。」
プリズナーのその一言でなまえの涙腺ダムが決壊した。
「ああ〜〜もう!ばか!プリズナーさんのばか!!わたしがプリズナーさんのことが好きなのに聞き入れてさえくれないなんて!!そんなに言うくらいならね、そんなに男の子がほしいってプリズナーさんが言うならね、わたしはプリズナーさんのために何人でもハメて連れてきてあげますよ!そんなことしたことないですけど?!プリズナーさんがそういうのを望んでるならそのとおりにしますよぉ?だって……好きだからぁ……――」
彼には珍しく、ぎょっとした様子で振り返るプリズナー。目の前にはわんわん泣きじゃくるなまえの姿。
「何言ってんだなまえ……そんなことしなくていいから!そしてハメるだなんて生々しい言葉やめてくれ!」
プリズナーは一向に泣きやまないなまえに近づき、少し躊躇って、屈んでなまえを抱きしめた。
「ほらぁ、もう泣くなよ……はいはい悪かったよ俺が悪かった。」
「……プリズナーさん絶対自分が悪いと思ってないでしょ。」
「……まぁ、別に俺のこと思ってそんな、そんな男子をホニャララるとかしなくていいから。そんなことなまえがするより俺がした方がたくさん男子釣れるから。なまえは自分の体を大切にしてくれよ。」
「でもさっきプリズナーさんが男子連れてこいって〜〜――」
「あー、あれ冗談、ものの喩え、いわゆる比喩だからな。」
「は?は?何よぉ…それ…やっぱりプリズナーさんのばか!」
エンジェル☆ポカポカ!となまえは叫んでプリズナーの腕の中でプリズナーをポカポカ叩いた。
2013/05/18
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