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▼ 成功と崖っぷち



怪人がポン菓子砲を撃つ寸前に射程範囲から逃れていたためになまえは無事だった。相手の動きは鈍い。そして相手にわざとポン菓子砲を撃たせる必要があった。


怪人に向かってなまえはダッシュし、その蓋が開いた口に先ほどドラッグストアから拝借したスプレー缶数本を投げ込む。

そしてすぐに怪人から離れる。


「な、貴様何を入れたんだポン?……まぁいい、またまた攻撃してやるポン!次は外さないポン!」


そう言って怪人は蓋を閉めてポン菓子砲を熱し始めた。
中の熱が一定の高さ高まったそのとき、中に入っていたスプレー缶のガスによる大きな爆発が起こった。怪人が悲鳴をあげる間もなく、赤色に包まれた。怪人の破片が飛び散る。

なまえは怪人を見たときからこの爆破を狙っていたのだ。

散らかった破片を踏まないようにしながら歩き、その焦げた異臭に眉をひそめる。

ふと表情が緩んで、口が弧をえがく。


よかった、今日もわたしが無事で。


うんうん、と満足げに頷き、なまえは再びジョギングをして家に帰ろうとした。


振り返ったとき、目の前にはふよふよとした怪人がいた。いや、こいつに知能はあるのか、塊から無数の触手が伸びて小刻みに振動している。口はない、目もない、見た目はただのスライムのようだった。そしてこの怪物、なかなか大きい。ビルの三階くらいの体長はあるだろう。それの半透明な体によってなまえの体は陰にあった。


もしかして、先程大勢の人が逃げていたのはポン菓子怪人からじゃなくて、このでかいスライムから?


逃げよう、なまえはスライムに背中を向けて駆け出そうとした。脚に絡むスライムの触手。


ひやっと背筋に悪寒が走ったのは、その冷たさからか、もしくはその恐怖からか。





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