03.どうして…
あれから3年、私は高校生になった。
涼介さんとの恋人ごっこはまだ続いていた。

でも涼介さんは医大生で忙しく更に私と同じ年のイトコさんの勉強も見ているらしい。
私は休日の午後に少し会うだけだった。
それでも構わなかった。だって私はーー。

明日から夏休みか…。
かったるい。
でも夕方、涼介さんと少しだけ会う約束してるんだよね。
それだけが楽しみだよ!

そう思いながら私はイツキと渡り廊下にいてイツキの話を聞いていた。

「やっぱシルビアはやめてハチロク探そう。それなら現実味があるよ…」
「貯金あるの?」
「5万とちょっと…」
「先長いね」
「海月も一緒に購入しないか?」
「私、バイトしてないしお金もないから無理だよ」
「そっか。なら仕方ねえよな」
昔から何も聞いてこないイツキには感謝しかない。
いつもありがとう!イツキ!!

「あ、海月ちゃん!先生が探してたよ!」
「あ、今行くー!イツキ、また連絡するから!」
「おう!またなー!」

そう言って私はその場を離れた。
まさかイツキとすぐに会うとは思わないまま。

夕方、いつもの場所で待ってるとロータリーエンジンの独特な音が聞こえる。
涼介さんだ!
白いFC(涼介さんに聞いた)が目の前に止まり助手席のドアが開かれる。
そして私はFCに乗り込んだ。
「久しぶりだな。色々忙しくてすまない」
「いいえ」
「いつものファミレスでいいか?」
「はい!」
隣で涼介さんが運転している。幸せだ…!
「海月、いつもすまない」
「いえ…今日も時間をとってくださりありがとうございます!」
「それは恋人だから当たり前だろ」
涼介さんから恋人と聞くと何故か夢から醒めた気持ちになる。
それは偽りだから?それとも何か…。
「海月?体調悪いのか?」
「え?」
「なんだか上の空だったから」
「すみません…」
考え事をしていた自分が恥ずかしくて下を向いているとクルマが止められた。
そこはいつもの場所じゃなくて秋名湖の駐車場だった。
「涼介さん、どうして?」
「たまには景色でもみて気分転換しようと思ってな」
そう言ってふわっと微笑み頭を撫でられた。
嬉しかった。あぁ…やっぱり大好きだ。でもこの気持ちは封印しないと。

そして涼介さんに送ってもらい、夕食を食べてる時だった。
イツキから電話が来た。
まさかそれが涼介さんとの関係を変えるとは思わなかった。

「このあと?別に何もないけど」
「じゃあさ、夜8時にバス停来いよ!バイトの先輩が夜の峠連れてってくれるらしいんだ!」
「別に興味ないけど…」
「いいから来いよ!じゃないと友達やめるからな!」

そう言われて電話が切られた。
面倒くさいけど、後のフォローが大変だから行くことにした。

「出かけんのか?」
「行きたくないけど…イツキに念押しされたからね」
「夜遊びも程々にしろよ。朝はたたき起こすからな」
「夜遊びじゃないよ。とりあえず誤解されないようにしよう」
「あぁ、あのFCのにいちゃんにか?」
ニヤニヤ笑う父さんを睨み、夕食を食べ、片付けを終らせると約束のバス停へと向かった。

「おせーぞ!海月!」
「ゴメン…」
「君が海月チャンか〜。イツキから噂は聞いてる。時間がないから乗ってくれ」
「お邪魔します」

乗ったはいいが滅茶苦茶怖かった。
ジェットコースターのほうがマシだって思うくらいに。

「うぅ〜」
「大丈夫か?いつもよりはりきりすぎたからな」
「海月、おまえこわがりすぎだ」
「だって怖いんだもん!ジェットコースターのほうがまだマシだよ!イツキに行ってもこの怖さは分かんないよ…」
「なに言ってんだ?」


すると、さっき聞いたロータリーエンジンの音が聞こえてきた。
私は気持ち悪さを忘れて立ち上がった。すると見覚えのあるFCと黄色い似たようなクルマが目立って見えた。

そして反対側に停まるとクルマから集団が降りてきてこっちに向かってきた。

「涼介さん…?」
わたしは無意識に震えながら呟いた。
どうしてここにいるんだろう?しかもあんな表情、みたことないよ。



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