04.他人のようで…
池谷さんと赤城レッドサンズの人のやりとりの間、涼介さんを見ていたが涼介さんはこちらを向かない。
なんだか他人になったようで辛くて、私は思わずイツキの腕を引っ張った。
「うわっ!なんだよ!海月」
その声がでかかったのか皆が一斉にこちらを向く。
視線を向けられたことで悲しさと恥ずかしさが一気に交わった。
「すみません…」
慌てて頭を下げ、一歩下がった。
涼介さんを見ると私がそこにいたのが意外だったのか驚いた顔でこちらを見つめていた。
「ゴホン、話を続けてもいいかな?」
「待て、史浩。ちょっとその子と話をしたいのだが抜けてもいいか?」
「アニキが抜けたら困るぜ!大体その女とアニキに何の関係あるんだよ!?」
「彼女なんだから何の文句もないだろう。おいで、海月」
みんながボーゼンとしている間、私は頷き涼介さんの手をとった。

そしてFCに乗り込むと秋名山を降りていった。
不思議と運転も気持ちも不安はなかった。
山を下りた辺りでクルマが止まった。

「海月、夜の山は度々来た事あるのか?」
涼介さんの質問にビクッとする。
「いえ…友達に誘われて初めてです」
なんとか声を振り絞り答える。
すると涼介さんは一つため息をついた。
「もう夜の峠には行かないでくれないか?…ガラが悪い奴も多いし危険なんだ」
「はい…」
「いい子だ」
涼介さんは頭を撫でてそのまま家に送ってくれた。
それからのことはあまり覚えてなくて気が付くと朝の配達の時間だった。

「おい、昨日遅かったみてぇだが、コップの水はこぼすなよ」
「…わかってる」
父さんとそんな会話をして朝の秋名山へと向かった。
すると昨日の走り屋らしき人達が前を走っているのが見えた。
遅いなぁ…私はクルマを抜かして先を急ぐ。
すると黄色い涼介さんみたいなクルマが前を走っていた。
涼介さんじゃないならいいや…私はそのクルマも抜かして山を下りて行った。
早く寝たいなぁ。

その出来事が私の運命を変えることなどまだ知る由もなかった。



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