初恋豆腐
「なまえへ、学校帰りに藤原豆腐店さんの木綿買ってきてね ママより」
昼頃ママからこんなメールがあり、友達との約束も断って買いに来た。全くよりによって藤原豆腐店かよ!拓海兄ちゃんにも会うのかなぁ…。

うちのママと拓海兄ちゃんのおばさんが仲がよくて歳も1つしか離れてない私達はよく遊んでた。近所の子供に泣かされてた私はよく兄ちゃんに助けてもらっていた。普段はポケっとしてるけど助けてくれるときは勇ましい兄ちゃんが大好きだった。ホントはずっと恋してたんだよ。でもたまたま拓海兄ちゃんが大人っぽい女の子とデートしてるのを見かけて私失恋したんだ、って思った。
それからはずっと兄ちゃんを避けてる。
だから正直兄ちゃんの家に行くのも嫌なんだよね〜。
でも私の想いとは裏腹に足は豆腐店へと着く。どうせ兄ちゃんは仕事でおじさんだけだろと思い店にはいった。
「すみませんー!」
「はい、ってなまえじゃないか!久しぶり」
なんと予想を裏切って拓海兄ちゃんが出てきた。私は思わず後ずさる。
「拓海兄ちゃん…おじさんは?」
「オヤジなら町内の寄り合いに行ってるけど豆腐買いにきたんだろ?なに買う?」
「…いい」
「え?」
「兄ちゃんじゃ買わない」
私は店を飛び出した。慌てて拓海兄ちゃんも追いかけてくる。コンパスの差か私はすぐに兄ちゃんに捕まった。
「離して!」
「それどういう意味だよ!なんか去年からオレのこと避けてるみたいだし訳わかんねー」
「だって兄ちゃん彼女いんじゃん!私と仲良くしたら彼女傷つくでしょ!!」
「は?彼女?」
「去年デートしてた…大人っぽい女の人と」
「(茂木のことかな)あいつは彼女じゃないよ」
「え?」
「ただの友達。今は東京にいるし会ってねえよ」
「じゃあ…私の勘違い…」
私は安心したのか腰が抜けその場に座りこんだ。
「おい、大丈夫か?」
「拓海兄ちゃん…私、誤解してて避けてゴメン」
「ああ…それよりここだと目立つからオレの家に行こう」
「でも腰が抜けて立てないよ…」
「仕方ねえな」
兄ちゃんの顔がアップにうつったと思ったらふわりと浮いた。よくよく見たら私、お姫様抱っこされてる!!
「兄ちゃん恥ずかしいよ!」
多分私顔真っ赤だ。兄ちゃんに見られたくなくて手で隠す。
「ここで座り込んでるよりいいだろ?それにこれはおしおきだし」
「え?」
「今まで避けてた罰。結構きつかったんだぜ。なまえに避けられるの」
「ゴメン…」
「それにせっかく捕まえたんだ。伝えたいこともあるし」
そして私と兄ちゃんは店へと戻った。

私は店の奥の茶の間に通されて兄ちゃんとテーブルに向かい合って座っている。なんだか無言が怖かった。
「…なまえは今でもオレにとって守るべき存在なんだ」
「え?」
「妹だからとか…そういうのじゃなくて好きだから。うまくいえねーけどずっと好きだったんだ。だから避けられた時も嫌われたかと思ってすげー落ち込んだ」
「…私も拓海兄ちゃん、ううん、拓海のことが好き!異性として」
「なまえ…ありがとな」
拓海に頭を撫でられる。こういうのも好きだけど…子供扱いしないでね。
「夜遅くなったし送ってくよ」
「うん。でもおじさん帰ってこないよ」
「いいよ。もう閉店の時間だしシャッター閉めてくる」
拓海がシャッターを閉め家まで送ってくれた。
なんだか拓海の隣は居心地がよくてフワフワした。ああ幸せだな。
しかしなんのために藤原豆腐店に行ったのか忘れていた私はこの後ママに怒られることになる。



-----------------
陸様
大変遅くなりましたが1000人突破おめでとうございます。
これからもこのサイトを宜しくお願いします。
こちらは陸様のみお持ち帰り自由です。


TOP
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -