ラジオハイウェイ
深夜のFM放送を聞きながら、車はハイウェイを飛ばす。
ステレオから流れる音楽はいつだって一昔前のもので、誰が歌っているのかわからない。
ハンドルを握るトラファルガーが溢すへたくそな鼻唄に、お気に入りの一曲なのだと気付いた。
ざらついた夜のネオンを背に、俺たちは家路を急ぐ。
運転はいつもトラファルガーだ。
どんなに疲れていようが必ず運転席に座る奴に、いつしか替わろうかという一言さえ発しなくなった。
運転したけりゃすればいい。俺は助手席で寝てる方が楽で好きだ。
「人が運転してんだから寝んな」
「寝てねぇ」
「なんか喋れ」
「なんか」
「ホント、ユースタス屋むかつく。好きだ」
「意味わかんねぇ」
満杯の灰皿に煙草を押し入れて、ひたすらまっすぐ進む。
今日は夜明けまでに帰れるのだろうか。
背中に見える赤のパトランプ。
そんなことさえ気にせず鼻唄は続く。
夜明けまでに逃げ切れるだろうか。
「飛ばせ」
「言われなくても」
背中に赤のパトランプ。
札束を乗せて走るボロ車。
深夜のFM放送を聞きながら、ハイウェイを飛ばす。
「相変わらずへたくそ」
「うるせぇ」
広大な大地で鼻唄が零れる。
END