夜はお静かに







これほどまでに夜が長いと感じたのは、初めてだった。
あまりにも小さな島は、日暮れと共に寝静まる。かろうじて明かりを点す酒場も日付の変わるずいぶんと前に閉まってしまった。
静かすぎる夜は窮屈でならない。
そう感じているのはなにも一人だけではない。だが船員たちは誰も皆、息を潜めるかのごとく静かだった。
島全体を包む、静寂という名の毛布にくるまれていつもより幾分も早い眠りに就こうとしているのだろうか。
それならそれで構わない。叩き起こすつもりはない。
たまにはこんな窮屈な夜があってもいいだろう。
納得してブーツを脱いだ。
十分に暖めた部屋であっても、シーツは冷たかった。

「冷てぇ」
「暖めてやろうか?」

静寂を切り裂いたのは、鍵のかかったドアノブをぶっ壊す音だった。

「夜はまだ、これからだろ?なぁ、ユースタス屋ァ?」

なんでお前がいる、だとか、ドア壊すな、だとか、とりあえずそんなことはどうだっていい。
静寂という毛布はもうすでに破り捨てられたのだ。

それに代わる毛布が必要だった。



END

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