閉塞の庭







天国か、地獄か。
どちらにせよ、いいところではない。







開いた窓から、名も知らぬ南国の花の甘ったるい匂いが届いている。
蒸し暑い気候とその甘ったるい匂いに脳が悲鳴を上げる。そういやここ数日まともに眠った記憶がない。
永遠に続く真昼の世界では、眠ることを忘れてしまってもなんらおかしくはない。
時間が狂っているのだ。
開けっ放しの窓からは、穏やかな風が絶えず南国花の匂いを運んでくる。
ここは天国か地獄か。
あぁ、それを決めるのがここだっただろうか。
どちらにせよ、気分のいい場所ではない。







多分、外の世界では夜なのだろう。
時計は午後9時を指している。
永遠に続く昼の世界。南国花の匂いは強くなる一方だ。
項垂れるようにベッドに横になった。南国花の強烈な香りと共に訪れた睡魔が、脳を侵す。
久しぶりの休息だ。身体中が歓喜の悲鳴を上げている。
もう今まさに眠りに落ちる、という瞬間、空気が変わった。
開けっ放しの窓に、誰かがいる。
目を開けずとも誰だかわかるあたり、随分とそいつに入れ込んでいる事実に気付く。
それでも目は開けない。その間にも侵入者は一歩一歩近付いてくる。そしてベッドまでたどり着くと熱を帯びた吐息を吹き掛けられた。
空気が淀んでいる。
気候のせいか、南国花の香りのせいか。それともこの侵入者のせいか。いよいよ考えることさえ煩わしくなって、目を開けた。
緩く侵入者を睨んでも、そいつは満足げに笑っただけだった。
諦めてもう一度目を閉じた。



南国花の甘ったるい匂いに脳が支配されている。


END
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