渦を成す
何に苛立っているのか。苛立っている本人ですら理解していなかった。
とにかく自分は苛立っていて、それを解消出来るのはただ一つ。こいつを抱くことだけだと決め付けて、勢いよくドアを開いた。
部屋の中にはカクがいる。ソファに横になり眠っているそいつの唇を無理矢理奪った。
「…っん!ちょ、…ルッ、チ!」
最初は抵抗していたが、次第になにか悟ったのか、大人しく舌を絡めてくるそいつに、なぜだかルッチはまた苛立ちを覚えた。
「どうした?ルッチ。顔色が悪いぞ?」
くすくすと笑いながら、カクは言う。
「うるせぇ」
答えにならない言葉を吐いて、ルッチは性急にカクを抱いた。
「ルッチ、」
獣のように喉元に噛みつくルッチの髪の毛を撫でながら、カクは楽しそうに名前を呼んだ。
訝しげに見上げたルッチの視線を捉えるのは、欲望にまみれた獣の目だった。
それが優しく細められたかと思うと、
「いい子、」
おもむろに頭を撫でられた。
一瞬、また眉間の皺を深くしたルッチだったが、すぐに呆れたようにため息を吐いた。
あぁ、苛立ちの元凶がこんなところにも。
END