第一章2


Homesick Street

2015/05/23

第二話



ホグワーツ行きの列車に乗ったハリー・ポッターは、ロン・ウィーズリーと既に友達になった。話のしやすいロンとの会話は最高に盛り上がり、ハリーは久しぶりの楽しい気持ちに懸命に口を動かす。大盛り上がりでロンとハリーが大量に買ったお菓子を頬張っていると、突然扉が開き、そこには息を切らせた緑の髪の少女が。
ロンは「え、誰?」と言いたげな顔をしているが、ハリーはその少女を知っていた。中々思い出せないが、確かに自分は彼女と交流があったはずだ。と、ハリーは思考を巡らせる。誰も何も発しないのを見て、少女は呟く。

「ハリー?」
「僕の事、知ってるの?」
「え、知り合い?」
「あの、覚えてない?半年前位に…動物園で、」
「あーーー!!!」
「っ!?」
「あの、時の!あの、女の子!」
「そうだよ、ハリー」
「あれ?でもどうして僕の名前…それに、」
「どうしてこの列車に乗ってるのか、だよね。でもその前に自己紹介しないと…座ってもいい?」
「え!?あ、あ、うん、どうぞ!」

大声を上げたハリーは、彼女が昔助けた少女だと分かると嬉しさに顔を綻ばせた。しかし自分の名を名乗った覚えも無く、自分たちが乗っている列車がホグワーツ行きだと思い出し、首を傾げる。そんなハリーに説明をしようと少女は椅子を見、ハリーの横にはお菓子が山ほど積んであるのに気が付く。お菓子の量に苦笑しながら少女はロンへ向き、隣へ座ってもいいかと聞いた。突然話し掛けられたロンは、ドギマギとしながらも窓へ寄って席を開けた。空けられた席へ座り、少女は扉を閉めて二人に向き直る。

「私の名前はシャルロット・シィーラ。今年からホグワーツに入るから、二人と同い年ね」
「シャルロットだね。僕は…もう知ってるみたいだけど、ハリー・ポッター」
「ぼ、僕は、ロン・ウィーズリー、」
「ええ、よろしく。ロン、ハリー」

2人に向けて柔らかく微笑んだ少女――シャルロットに、ハリーは「変わったな」と素直に思った。たった半年前のことだが、あの時のシャルロットは生気を失ったような目で表情も硬かった。それが今では、確かに通常の顔は固く無表情に近いが、柔らかく微笑んでいた。きっと半年間で何かあったのだろうと、ハリーは適当に結論付けた。そんな事よりまたシャルロットに会えたことが嬉しかったからだ。何だか彼女には、守らなければと思わせる何かをハリーは感じていた。
そしてシャルロットも、あの日からずっとハリーを追い求めていたのだ。自分を助け、感情を変えてくれたハリー・ポッターに会って、お礼を言おうとずっと。今回会う事でシャルロットはお礼も言え、とても満たされている。
三人で楽しく談笑し、ロンとシャルロットも違和感なく話を盛り上げていたところで、またも扉が開いた。そこに立っていたのは金髪のブロンドの少年。彼は席をグルりと見渡し、一度シャルロットに目を止めた。ジロジロと見て来る視線が嫌なのか、シャルロットは少年から目を逸らす。
逸らされた視線を知ってか知らずか、少年は偉そうに腕を組んだままハリーに視線を移した。

「キミがハリー・ポッター?」
「そうだよ」
「そうか。僕はドラコ・マルフォイ」
「マルフォイって…」
「僕の家を知っているのか。キミは?」
「……シャルロット・シィーラ」
「ああ、やはりキミがシィーラ家の」
「私の家を知ってるの?」
「勿論知ってるさ、シィーラ家は僕の家と一緒で歴代スリザリンだろう」
「……そう、」
「キミみたいな優秀な魔女と同じ寮だと嬉しいよ、じゃあね」
「…………」

去り際にニヤニヤとした笑みを向けられ、シャルロットは無意識に体をロンの方へ寄せた。
マルフォイ家、シィーラ家である彼女が知らないはずがなかった。親からは良く話を聞いていたし、仲良くして損は無いとさえ言われていた。しかし彼女の親は決して、マルフォイ家を褒めてはいなかった。その話の矛盾に首を傾げていたのは昔の話。シャルロットはドラコを見て理解していた。親の言っている意味を理解して、途端に寒気の様なものが背筋を走ったのだ。
肩を抱いて俯くシャルロットを、ロンは心配そうに見つめている。どうしたらいいか分からない、という視線を向けてくるロンに頷き、ハリーは立ち上がった。そのままシャルロットの前で膝を付いて目線を合わせると、頭に軽く手を置いて笑った。

「シャルロット、大丈夫だよ」
「え?」
「彼は嫌味っぽいけど、キミのことを馬鹿にしてる訳じゃない」
「嫌味っぽいどころの話しじゃないだろ…」
「……あははっ、」
「どうして笑うの!?」
「ううん。そうだね、そうだよね。…ありがとう、ハリー」

恐怖で自然と出ていた涙を拭いながら、シャルロットは微笑む。突然笑い出したシャルロットに慌てていたハリーとロンも、その笑顔を見ると笑い出す。三人で暫くの間笑っていると、ドラコの前に入ってきて友達になったばかりのハーマイオニーが入ってきた。着替えましょうとシャルロットを引っ張って行くハーマイオニーを見ながら、二人は肩を竦めてまた笑った。

三人の席を去ったドラコは自分の席に戻りながら、笑いを堪え切れないと言うように手で口を押さえた。
ドラコもまた、両親からグローラ家の事を聞かされていた。父親に至っては、シャルロットの母親であるアリサと結婚する気だったとまで述べた。もちろんその話は二人きりの時にしていたが、ドラコは心底驚いた。父親がそこまで言う女とは、一体どんな人物なのかと。写真を見せられた時、アリサは確かに美しく、そして意志の強さを持っていると見て分かった。
そしてドラコは父の為にもシャルロットを引き寄せようとしている。スリザリンに入ればそれも簡単だろうと。

「シィーラ、やっと見つけた…」

席に座り、そう呟いたドラコを、クラップとゴイルは不安そうな目で見つめていた。
窓に肘を付いて笑うドラコの目は、獲物を狙う蛇の目そのものだった。



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