雄英高校ヒーロー科。

その名は専門学校のようにヒーローについてのみを徹底して勉強していくようなイメージがあるが、実はそうでも無い。午前は必修科目・英語等の普通の授業。つまりは普通の高校状態。英語の時間、ボイスヒーローのプレゼント・マイクが英語の教師でやけにテンション高かったけど、内容は至って普通。ヒーローうんぬんかんぬんよりも取り敢えず世間に出る分の知識は付けないと、と言う事らしい。

そしてそんな至って平和な午前の授業が終われば、昼休みは大食堂で一流の料理を安価で頂ける。それもクックヒーローのランチラッシュの料理だ。


「帷ちゃん!お昼、食堂に食べに行こ!」

『勿論!』


中学生時代から学食と言うものに憧れていたというのもあり、お茶子ちゃんに声を掛けられるや否やガタッと椅子から立ち上がって返事をする。まさかお誘いがあるとは予想外だったが…本当、友達って良いね。
向かう前に緑谷くんたちも誘ってみる?とお茶子ちゃんからの提案もあって、2人で出久を誘い丁度そこに居た飯田くんも誘った。2人とも快く乗ってくれた。食事は人数が多い方が良い。早速座席を確保するためにも4人で食堂へ向かった。


―――…


無事に食堂の美味しい料理を味わい、4人で他愛も無い会話を交わしている内にあっというまに昼休みは終了。昼休みが終わった午後は、ヒーローを目指している生徒ならば待ってましたと一丸になって叫ぶであろう、"ヒーロー基礎学"を学ぶことになる。
食堂から教室に戻り、席について待っていると―…


わーたーしーがー!!


廊下に響き渡る声に、誰もが胸を弾ませた。今年から教師になったというあの人がもうすぐそこまで来ている。


普通にドアから来た!!!


HAHAHAHA!と満面の笑みで教室のドアを開けて現れたのは誰であろう、あの"オールマイト"だ。しかも銀時代のコスチュームだ。嗚呼もう、鳥肌が止まらない。


「っ……!」


実物を見るのは初めてだ。だが、テレビで見た時よりも本当に迫力というか貫録がある。数々のヒーロー伝説を作り上げたあの人が今、目の前に居ると思うだけで脈拍が上がる。でも私よりきっと興奮しているのは出久の方だろう。チラリと視線を向ければ目を爛々と輝かせてオールマイトを見つめている。


「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為様々な訓練を行う科目だ!!」


ヒーローを目指す者なら必須の授業。単位数も最も多いぞ!と付け加えたオールマイト。それを覚悟で皆入学したのだ。望むところ、とばかりにこれから行う授業に皆胸を躍らせ、本日の授業内容の発表をまだかまだかと目を輝かせている。


「早速だが今日はコレ!!戦闘訓練!!!」


ザワつく教室内。オールマイトが突き付けたBATTLEの文字が書かれたカードが授業内容を全て物語っている。確かにヒーローを目指す以上戦闘訓練もあるとは思っていたが、初授業でいきなりとは…流石雄英ヒーロー科。


「そしてそいつに伴って……こちら!!!」


オールマイトの言葉に反応するようにガコッと何かが動く音がした。すると教室の壁が御ゴゴゴゴ…と動き出した。一斉に教室中の視線がそちらに向けられる。壁だと思っていたそこは収納棚だったらしく、棚の1つ1つに番号の付いたケースが収納されている。


「入学前に送ってもらった"個性届"と"要望"に沿ってあつらえた…戦闘服(コスチューム!!!」


おおおおお!!とその言葉にクラス中がザワめき、歓声が上がる。中には興奮が抑えられないのか椅子から立ち上がっている生徒もいた。皆次々と順番通りに棚から自分の番号の戦闘服の入ったケースを受け取っては嬉しそうに抱えている。
私も個性届と要望を前に出していた。出来上がりは他の皆と同じで分からないが、いざ手にとってみれば皆、興奮してしまうのもうなずける。早く出来上がった戦闘服を見たいし着たいし、実際に戦闘で動いてみたいという期待とか嬉しさで感情が爆発しそうだ。


「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!!」

「≪はーい!!!≫」


それぞれ生徒の手に各戦闘服が渡ったのを確認したオールマイトが指示を出せば、声を揃えて素直に返事を返すや否や、皆大切そうに戦闘服を抱えて更衣室に向かった。

格好から入るのも大事だ、って誰が言っていたっけ。でも本当にそうだと思う。戦闘服があるだけで、自分がヒーローなのだとしっかり自覚できるような気もするし何より気が引き締まる。あれだ大事な場面の勝負服的な。
パチンパチン、とケースのロックを外して蓋を開ければ出てきたのは何ともシンプルなコスチューム。まぁ、出来るだけシンプルにという要望を出しておいたからそれが通ったという事なのだろうが。黒のインナーのようなピッチリ目のスーツに袖を通す。嗚呼、軽くて丈夫な素材で出来てる。それにプラスズボンとブーツという本当にシンプルなスーツ。周りに居たある数人の着ているスーツを見て、本当に自分は要望通りで助かったと思ったのは秘密である。


さあ!!始めようか、有精卵共!!



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