※ミカン様リクエスト「オデン二人でプロポーズする話」※



正直、俺とデンジはつい先ほどまで親友とも恋人ともつかない関係を、それこそ何年も続けてきた(だが、どうやら他人の目線から見ると恋人同士にしか見えなかったようだ)。まあ確かに、お互いに好きとかキスしたりとかはしないものの、やっていることは恋人達の間ですることのようであったと思う。いや、むしろ家事全般を俺が行っていたから、ある意味で恋人を通り越して夫婦か。
とまあ、そんな関係を続けてきたわけで(大事なことなので、もう一回)。しかし、そんなあやふやな関係ももう終わり。

「ずっと前から好きだったんだ」

「……俺も、」

なんだ、と拍子抜けするくらい、そのやり取りは短くて、緊張もへったくれもないようなものだった。こんなに簡単に済むようなことだったら、もっと早く言っていればよかったと思うほど事がスムーズに進んだので、俺が目を丸くして黙っていたら、デンジが笑った。

「なんだ、あっさり終わって拍子抜けか?」

「……ああ、なんか後悔した」

「まあいいんじゃねえの。俺はむしろ心配してたぞ、お前がいつになっても告白しないから」

「だったらお前からしろよ」

「はあ?こういうのはお前の役目だろうが」

案外ロマンチストなんだなあと俺がしみじみ思っていると、デンジが距離を詰めて擦り寄ってくる(まるで猫撫で声で寄ってくる猫のように)。こいつ、告白した途端にこんな大胆になりやがって。やっぱりここでももっと早く告白しとけば、と思ったが、寄せられた唇にその後悔は全てかき消されることになる。
(どうやら、すごい待たせてしまったようだ)
と思うほどに、デンジは顔には見せずとも、行動がなんとなく性急だった。相変わらずのポーカーフェイスなくせに、中身は俺とこういうことしたくてたまらなかったというわけか。かわいいな。なんて優越感に浸っていれば、がりりと下唇を力任せに噛みつかれた。

「にやにやすんなアフロ」

「んー?いやだって、デンジがかわいいからさ」

「……きも」

照れ隠しのように、すねを蹴られた(正直、涙が出そうなくらいに痛い)が、俺は笑顔でそれを何とか受け止める。すると、デンジは回していた腕を離して、俺と少し距離をとった。今俺の視界には、「恋人になった」デンジがつま先から頭の先まで、余すところなく映っている。なんだか、親友のころと違って、全てが愛おしく見える(しかも、それをおくびもなく言えるというこの幸せよ!)。
そんなふうに俺が悦に浸っていると、デンジはまた薄く笑った。やっぱり今日のデンジは上機嫌だ。当たり前か。あまり実感がわかないが、デンジも俺の告白を待っていてくれたんだよな。

「…じゃあそんな幸せボケしそうなオーバくんにとどめの一撃をかましてやろうか」

「おう、幸せボケしそうなデンジくんの言葉、全力で受け止めてやるぜ」

にやり。デンジがまた上機嫌に笑った。

「恋人だけじゃ物足りないから、お前を夫として迎えてやってもいい」

「……なんだそれ」

お前の願望じゃん、なんて笑ったら、

「それじゃあいけないか?」

確信犯的な笑みが浮かんだ。なんだ、今日は忙しいな。恋人になってくださいと告白した次の瞬間には、もう結婚してくださいと告白された。しかし、事実として俺はデンジから離れられない(本当に、いろんな意味で、である)から、なんにしても答えは一つだった。それをデンジはわかりきった上で、俺にこんな事を言うのだ。ああ、なんて愛おしい小悪魔。でも俺も一つ返事で肯定するのも癪だから、少し意地悪く笑って、それに応える。

「仕方ねえなあ、俺がいないと何にもできないデンジだもんなあ」

「ニヤニヤすんな気持ち悪い。…で、答えはどうなんだよ」

わかってるくせに、とからかえば、お前の口から聞きたいんだと頬をつねられた。痛い。しかし、殺し文句すぎるだろうよ、このセリフは。そう思いながら、俺はもう一度息を吸った。

「じゃあ、お前をお嫁さんに貰ってやるよ」

と言えば、上出来だと言わんばかりに、キスの雨が降ってきた。ああ、本当に今日のデンジは夢なんじゃないかと思うほどに魅惑的で、大胆で、可愛い悪魔だ。
そしてその悪魔は俺を組み敷いて、にやりと笑った。


(さて、初夜と行こうじゃないか)
(…まだ昼なんだけど)



2011.06.16

企画倒れとなってしまった10000hitのものです。
リクエストしてくださってありがとうございました!

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