イケメンだからって何しても許されるとおもってるの?ええ、そうですとも。許されますとも




「なるほど、白か」

「なにがで、」

 後の続きの言葉は声にならなかったので想像でお願いしたい。今現在私は、ビブスやらの洗濯物が大量に詰まった籠を両手で抱えて運んでいる最中なのだが。もう一度言うが両手で、だ。量が量なので結構な重さのそれは片手で抱えることは殆んど不可能なのである。つまり私は手がどちらとも塞がっており非常に無防備な状態だったのだ。それだというのに、いやむしろそれだからなのだろうが。
 いつの間にやら背後に回っていた伊月先輩に気付かなかったのは私の失態だ。この人に後ろを取られてはいけないと分かっていたというのに。しかし、人間というものは怒りやら羞恥やらがいっぺんに身に降り掛かってきたとき、何故か妙に冷静になってしまったりするらしい。そして認めたくはないが、私自身がこの先輩に慣れてきてしまっている現実も否めない。

「何をしているんですか」

「ん?白河の今日の下着チェックを、」

 がつん、とかましたそれは私の渾身の蹴りであり、鳩尾を押さえて蹲る先輩は非常に残念極まりないことこの上なし。いくら冷静になったからといって怒りを忘れている訳ではないのだ。スカート捲りだなんて今時小学生ですらしないようなことを、あたかも当然のようにやってのけるこの人が私の恋人だなんて世界は可笑しい。

「酷いな。選手に何するんだ」

「酷いのは伊月先輩の頭です。暴力沙汰以前に痴漢行為で問題になるわ」

「自分の彼女の下着をチェックするのは痴漢じゃないだろ」

「真顔で言うの止めてくれませんか。犯罪臭が半端ないです」

「……じゃあ俺の下着も見るか。それならフェ「アだと思うのか」

 可笑しいぞ、絶対に可笑しい。なんだそのきょとん顔、なんで不思議そうな顔してんのこの人。それでも顔がいいだけに、モテてしまうのが難点なのだ。ほら私にとっては腹が立つばかりのこの顔だって、可愛いだろうが畜生め。そんなんだから女の子ホイホイくっ付いて来ちゃうんでしょうが。冴え渡るギャグセンスのお陰でそんな女の子たちもだいぶ離れていくのだけれど、それでもやっぱりモテるもんはモテる。女の子たち全員にさっきのやりとり丸々見せてやりたい。

「はっ、まさか」

「なんですか。一応聞いてあげます」

「勝負下着じゃなかったのか」

「何言ってるんだろうこの人」

「大丈夫だ、白河ならどんな下着でも勝負できる」

「全然大丈夫じゃないですね。主に先輩の頭が」

 下着を見られて恥ずかしい、というのが分からないのか。まあ、分かる筈がないよな、この人に限って。いやもしかしたらだからこそなのか。恥ずかしがっているところを見たいからなのか。なんだそれは只の真性の変態じゃないか。後ろを警戒しつつ籠を部室棟にある洗濯機に運ぶべく、また歩き出せば何故か先輩も付いて来た。すると急に籠を横から攫われた。

「え、ちょ」

「なんか白河がよたよたしてたからな」

 気になって手伝いに来た、そう続ける先輩のそんなところがズルいと思う。どうにか奪い返そうと試みても軽くあしらわれてしまう。「マネージャーの仕事なので」と言っても「俺らが使ったやつだから」と反論してくるし。きゅんとなんてしてない!断じて!
 籠を高く上げられそれに釣られぴょんぴょんと跳ねれば不意に黙り込んでしまった。不思議に思っていると「ちょっともう一回跳ねてみて」と頼まれはたと気付く、伊月先輩の視線の先に。「揺れ、」みなまで言う前に仕留めた勿論拳でだ。私のときめきを返せ。いや、やっぱりときめいてなんてない。

「そういえば、参考意見までに」

「いらないです。つかめげないな」

「白も結構いいと」
「グーとパーどっちがいいですか?」

「どっちも遠慮したい」

「先輩ったらチョキを選ぶなんて中々の勇者ですねーちょーっとイーグルアイ使いにくくなるかもですけど」

「いやちょ待て待て」





無垢様よりお題拝借
やっちまったぜ!


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