小奇麗なマンションの一室の前にて、仁王立ちで構える少女と気だるそうにひたすらインターフォンを連打する大男。実際には彼はまだ高校一年生であるのだが、彼の長身と人相の悪さ、また彼女との身長差も相俟って“大男”という表現がものの見事に的を得ている。
そしてその大男の隣で腕を組んで威風堂々といったような彼女は、見た目だけで言えば至って普通の女子高生なのだが。その立ち姿と大男との異色すぎるコンビの所為で既に普通とは言い難い。
彼女は徐に胸いっぱいに空気を吸い込むと、相方がインターフォンを押し続ける部屋の住人に向かって届くように、心を込めて!
「かーがーみーくーん」
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
「あーそーぼー」
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポn
「だあああああああああああああうるっっっせええええええええ」
「やっほー、かがみん君。あそんでちょー」
「うっせんだよ、帰れ!」
「まったく、来ていきなり帰れとは開口一番失礼千万だなあ」
「かいこ…?わっけわかんねーよ!」
「ああごめんね。かがみん君馬鹿だったもんねばかがみ君だもんねごめんね」
「絶対嫌味だろテメェ……つーかなんで青峰までいんだよ!」
「あー?暇潰しに決まってんだろ」
「知らねーよ!つか近所迷惑だろうが!」
「ゴメンネーバカガミクン」
「白々しすぎんだろ!」
「いやだなあ、ばかがみ君。黒々しいと言ってあげてよ。白い青峰とかブッフォ」
「うぜーよ。つか吹いてんじゃねえ」
彼女、白河は一頻り笑うと今度はにんまりとした何処か恐ろしく感じる笑みを貼り付ける。火神は野生の勘でそんな何かを感じ取ったのだろう。心なしかじりじりと後退する。
「大丈夫、心配はないよ」
「なにがだよ」
訝しげに白河を見る火神に対し、彼女は全力の笑顔で告げた。
「ちゃんとご近所さんには挨拶しといたよん」
「お…前らマジで帰れ!」
「主人がいつもお世話になってますーって言っといたよ」
「何が大丈夫で何が心配ないのか説明してみろ」
「え?なんのことかな」
「テメェと俺はいつからんな関係になった!」
「私を……捨てる……というの……?」
「一々意味深な言い方すんのヤメロ」
「どーでもいーからバスケ付き合えよ」
「えーもうちょいばかがみくん弄りた…ゲフンゲフン」
「おい今なんか聞こえたぞ」
「気のせいだよー」
「さっさと行くぞ」
「なんで俺がお前らの暇潰しに付き合わなきゃなんねーんだよ!」
「ちょい待ち青峰」
「おい無視すんな!」
「私はかがみんくんの部屋に入りたいそして寝室に忍び込んでベッドの下に隠されたエロ本を漁り隊であります」
「お、それもいいな」
「ふ ざ け ん な!つーかここで言ってる時点で忍んでねーし!」
「ようやく利害一致したな。よしそれではかがみんくんの嗜好をさぐるのだよー!」
「勝手に入るな!」
「おっほ!かがみんくんの下着はっけーん!」
「なあ巨乳のねーの?」
「帰れえええええええええええええええええええ」
∞
「あ、おはようございますぅ。はじめましていつも主人がお世話になっていますー。あらいえいえとんでもないです。あ、この子ですか?うちの息子ですー」
「よし、シュミレーション完璧」
「無理ありすぎんだろ」
これは…ひどい。
すいません、火神くん好きなんです好きだから故なんです