隣り合わせ


 右隣、ひしひしと感じる視線に戸惑うのは当然だと思う。高校入学してまだ間もない、つかまだ二日目。人より口が悪い自覚はあるが、まだ反感を買うようなことをした記憶はない。なんなんだ、と思いながら伏せた顔を上げられない。俺が机に突っ伏してるのをいいことに、隣の席の奴が遠慮なく此方をガン見してくる。こいつは確か、白河といっただろうか。バレてんぞ、白河。
 初日からこれだった。恐らく初対面の筈……なんだが、どうしたもんだろうか。つか、なんで俺がこんなに考えなきゃいけねーんだよ。

「なんだよ」

 顔を向けながら直球で問い掛ける。すると白河は面白いくらいに慌て始めた。なんだ今更、つか気付いてなかったのか。アワアワと分かりやすく動揺する様子がガキっぽくて笑えた。それが馬鹿にされたと思ったのか、今度はむっとした表情に変わる。確かに若干馬鹿にはしたが。

「なによ」
「いやあんたがガン見してきたからだろ」
「別に見てませーん。自意識過剰じゃない?」
「あはは、刺されてーの?」

 今のはカチンと来た。なんだこいつうっぜー!あんだけガン見してたクセにしらばっくれるとか。

「やれるモンならやれば?」

 小バカにした様に笑って抜かすこいつにカチンというよりブチッと来た。刺す!こいつぜってー刺す!
 返し方も一々ガキ臭くて一々癪に障る。絶対にこいつとは仲良くなれない、するつもりもない、つか無理だろ。

 けど、席が隣同士であることは変わらない訳で。どうしたって毎日顔を合わせる訳で。そうなれば合わない者同士で喧嘩になる訳で。クラスの連中がああまた始まったよ、だなんて慣れちまう程度には喧嘩になってた。それでも生活する上で隣の奴と全く接しないなんて出来るわけがない。しかも俺の左隣は窓ガラス。教科書なんかを忘れたりしたら白河に頼るしかない。絶対嫌だけど、絶対嫌だったのに、忘れた。つか誰かに勝手に借りてかれたらしい。そいつ後で轢く。
 横目で白河を盗み見れば必死に版書をしてる。脳ミソ小学生並みのこいつのことだ。俺が教科書忘れたなんて言ったら全力で馬鹿にしてくるに違いない。苛立つのを噛み殺してどうしようかと思案していれば、いきなり白河が机を引っ付けて来た。

「なにしてんの」
「ん」

 白河は短くそう漏らしてお互いの机の間に教科書を広げて「教科書ないんでしょ」と小声で続けた。驚いてぽかんと白河を見据える。

「なんで」
「なんで……って、ないと困るじゃん。宮地、成績落ちると練習時間減るとか言ってたし」
「まあ、そうだけど」

 なんか企んでるのか、とか頭打ったのか、とかただひたすら驚いたりだとか。じ、といつもより近付いた隣を見詰めてみる。そういえば、まじまじと白河を見る、なんてことはなかった気がする。いや、当たり前って言えば当たり前だけど。此方に気付いた白河はジト目で「前向けよ」だとか言ってくる。つか、色白いな。なんか餅みてー。

「らにすんの」

 気付けば頬に手を伸ばしてつねってた。いや、無意識だけど。なんだ、日頃の怨み辛みってやつか。つか、やわらかっ。

「いひゃい! ばかみやじ!」

 両頬摘まんで引っ張れば、よく伸びる。ぼけだのはげだの罵倒してくる声も舌足らずでアホみてえ。散々伸ばしてから放してやれば、涙目で殴ってきた。しかもグーとか、おま、本当に女か。

「ってーな」
「信じらんない!」
「グーパンかます女だって信じらんねーよ」
「宮地が先に……せんせー! 宮地君が教科書忘れた上にちょっかい出してきまーす!」
「お前まじで小学生か」
「お前らイチャつくなら廊下でやれー」
「「イチャついてない!」」


やっちゃったー!
馴れ初めというか初対面の話
初見で喧嘩とか…おま

とりあえず、頬つねらせたかっただけ



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