絶対に離れないように、俺から逃げられないように、腕の中に縛り付けた。こいつが俺の隣にいる。それだけで救われた気分になる自分を鼻で笑った。
力強く抱き込めば痛そうに顔を顰めているだろうと容易に想像できた。やめてくれ、拒まないでくれ。抵抗してくれ、俺に流されないでくれ。俺に染まらないでくれ、お願いだから頼むから。だけどお前は俺には眩しすぎるから。自棄に遠い気がして気が狂いそうになる。いっそのこと汚泥をぶつけて俺の元まで引き下げてしまおうか。そんなことを考えてみては自嘲を漏らすだけだった。
腕の力を緩めてずるずると雪崩れ込むと膝の上に落ち着いた。ゆるりと髪を撫でられれば、幼い子供に対するようなそれに、憤怒よりも先に安堵してしまうのだからどうしようもない。
自分がしてきたことに罪悪感など芽生えはしない。それすらも罪であることは知っているが、別段気を病むこともない。むしろ楽しんでやる。そんな自分が歪んでいるということも理解している。けれど、それがどうした。感受性など個人の自由だろう。言いたいやつには言わせておけばいい。
しかし、只唯一。この愛おしげに俺の髪を撫でるこの女だけは、別だった。
こいつはいつになったら気付くのだろうか。俺の異常な部分も汚れた部分も全て受け入れてしまうこいつは、それが可笑しいといつになったら気付いてしまうのだろうか。
まるで聖母を犯すかのような、そんな妄想が頭に過る。頭の端に必死に追いやったそれに感じた、どうしようもない罪悪感をひたすらに飲み込んだ。
俺とこいつを取り巻く、曖昧で危うい時間は一体いつまで続いてしまうだろうか。
「せいしんあんていざい」花宮視点
ヤンデレ分が強くなってしまった…
花宮にとって彼女は聖域みたいな存在で汚したくないけど自分との差異があることが苦しい、みたいな