恋患い恋煩い


 紙コップのオレンジジュースをちまちまと飲み下しながら、ちらりと横目で彼の様子を伺ってみた。今日の主役である彼はどこか照れ臭そうな笑顔を浮かべながら皆の輪の中心にいた。

 今日は彼の、青峰大輝の誕生日である。そして現在所謂お誕生日パーティーで絶賛お祝い中だ。いつもと変わらない面子で、こんな風に楽しく騒げるのはとても嬉しい。青峰が楽しそうで何よりだ、とも思う。彼を盗み見た視線を降下させて自らの鞄の膨らみを見やれば、溜め息が漏れそうになった。

 一応、このパーティーが私たちから青峰への誕生日プレゼントということになっているのだけど。私は彼に個人として、別のプレゼントを用意していた。さつきやら黒子やらに色々と相談したり、情報を頂いたりして選んだ。あとは渡すだけ、なんだけれど。どうも渡すタイミングを掴みあぐねている。

 ていうか、私だけプレゼントあげるなんて意味深すぎない?変だと思われないだろうか。ていうか、妙に緊張してしまって今日は折角の誕生日だというのに青峰とまだまともに話せてすらいない。
 自意識過剰だとは思いつつも、それを躊躇させてしまうのが恋心というものなのだからら本当に厄介だ。

 恋、だなんて私らしくもない。なんだか気恥ずかしくなって紙コップの縁を噛む。

「おい」
 ぶっきらぼうな呼び掛けに顔を上げれば、訝しげな顔をした青峰がどっかりと私の隣に腰掛ける。

「なんかお前今日変じゃね?」
「ふ、ふつーだけど? 至って超普通だけど?」
「嘘臭えな」

 青峰は少しだけ笑うと私の手から紙コップを抜き取って、一気に飲み干した。

「なにすんの」
「喉乾いたんだよ」
「自分の飲めよ」
「お前のものは俺のもの」
「やめろよリアルジャイアン」

 なんだ、普通に話せるじゃんか。いやだめだ……気を抜けば赤面する。ていうか変って……挙動不審モロバレじゃないか。ちょっとはにかんだ顔は可愛いなあとか、間接ちゅーじゃね!?とか一々キュンキュンするなよAカップめ!

「なあ」
「なによ」
「ん」
 突拍子もなく青峰はずい、と右手を開いて差し出してきた。まるで頂戴、とでも言うように掌をこちらへ向ける。

「なにこれ」
「寄越せ」
「何を」
「プレゼント」

 面を食らってしまった。まさかバレていたのか?しかし、こうも直球で来られても困る。いやでも今渡さずにいつ渡すのだ。私に渡せると思っているのか。そうだ私はやればできる子!
 鞄の中から淡い水色の紙袋を取り出す。ラッピングも凝りすぎず乙女ちっくになりすぎず、且つ不器用な私にも簡単に包めるもの、ということで結局は袋に包むだけというなんとも色気ないものになってしまったのだけれど、今更ながら少し後悔してきた。

 おずおずと包みを差し出すと、今度は青峰が驚いた表情をしてみせた。

「なに、その顔」
「いや、まじであるとは思わなくてよ」
「いらないなら」
「んなこと言ってねーだろ」

 「寄越せ」と言って半ば奪うように包みを手に取れば、断りもなく袋を開けやがった。だけど、嬉々として包みを開く横顔が子供みたいだったりだとか。小さいくせして一々高鳴る胸を抑え、やっぱり厄介だと思った。

「サンキュ! すげー嬉しい!」

 屈託ない笑顔で珍しく素直にそんなことを言われて、ああもう目眩がしそうだ。



青峰実は告白しに来たんですよ。
「プレゼントねーならお前ちょーだい」的なベッタベタな告白しに来たけど予期せぬプレゼント貰えて有頂天みたいな

リクではキセキでお祝いとのことだったのにキセキ出せなかったわたしは切腹すべき。
青峰誕大幅遅刻なわたしはやはり切腹すべき。



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